Notes ・ updated 2026-06-28
デザインコンサルティングと生成AIの共存戦略 — 産業×学術ラウンドテーブル
位置づけ: designer-role-ai-roundtable(前回: 「役割がどう変わるか」)の続編。今回は「役割」ではなくビジネスとしての共存戦略に焦点を絞り、4つの具体論点に踏み込んだ。産業ペルソナ(実務・損得): F=design-firm-lead(IDEO/frog 型)/C=strategy-consulting-design-lead(McKinsey/Song 型)/O=independent-design-office-lead(Pentagram/ブティック型)。学術 critic(理論担当): 理論/教育/産業。ビジネス根拠台帳: industry.md/voices.md。関連: ai-in-design-industry/ai-in-design-literature/ai-in-design-so-theory-debate/ai-design-near-term-flashpoints/so-theory-livelihood-gap/design-pricing-vs-ai-commoditization/democratization-recommodification-paradox。
問いと4論点
問い: デザインコンサルティングビジネスとして、生成AIとどう共存するか。
- サービスメニュー/提供価値の線引き: AIが代替する部分と残る部分。
- 課金モデル・提案方法の変化: 人月から成果ベースへの移行は現実的か。
- 脱中間化リスク: クライアントが自社でAIを使い始めた場合の対応。
- ジュニア育成とチーム構成: AI導入後のチームの人数・構成・入り口の変化。
TL;DR
産業3者が金勘定だけで4論点を掘り下げた結果、前回ラウンドテーブルの合意をさらに具体化しつつ、新たな構造的問題が浮上した。(1) サービスの線引きは3者が独立に「上流に逃げる」としたが、上流は戦略コンサル・法務・コンプライアンスとの管轄競合にさらされ、その管轄を経済的に請求する方法を誰も持たない。(2) 人月から成果ベースへの課金転換には調達部門・成果定義・リスク非対称の3つの構造的壁があり、移行実績がほぼない。(3) 脱中間化はプラットフォーム(Figma AI等)がクライアントに実行能力を移転する古典的パターンで、レビュー単価への縮小として進行中。(4) ジュニア育成問題は前回の合意を再確認しつつ、「個人の効率化と世代の再生産は別の位相の問題」であることが教育 critic により精密化された。学術 critic は、SO理論への前回の5つの突きつけのうち3つ(翻訳の本体性、boundary→探索の逆流、初参入の空白)が「共存戦略」テーマで深化することを示した。
R1: 産業3者の独立主張(business-only)
論点1: サービスメニューの線引き
3者が共有する構図: 量産制作(UIバリエーション、アイコン大量生成、ワイヤーフレーム量産、リサーチ書き起こし、PRD執筆)はAI代替で縮小。残るのは上流の判断・調整・探索。
| ペルソナ | 縮む部分 | 残る部分 | 新しい売り物 |
|---|---|---|---|
| F | UIバリエーション、アイコン量産、ワイヤー、リサーチ書き起こし(請求額の3-4割) | エスノグラフィ、政治調整、ファシリテーション、「最初の一筆」 | AI用デザインシステム設計、レビュー/キュレーション外注、AI導入業務再設計コンサル |
| C | UI量産、リサーチ一次処理、PRD執筆 | AI導入の組織設計(84%が未了, SC-03)、CX上流、AIプロダクトUX | AIガバナンス/倫理のデザイン(EU AI Act Art.50等) |
| O | バリエーション量産、カラー展開、アイコン大量生成、リサイズ | 最初のスケッチ、スタイルの方向性、ブランドのトーン設定、タイポグラフィ | (新売り物なし。既存のスタイル決定権を死守する戦略) |
3者の一致: 残る管轄は経済的に請求する方法を持たない。Fの「テイスト料を提案行に書いて通った実績がない」、Cの「デザイン成果を経営数値に因果帰属できない」、Oの「手仕事プレミアムを見積書に明示して通った実績がない」。
相互反論(R2): CはFに「テイスト料を見積書に書いて調達部門が承認したケースがあるなら見せろ」。OはFに「組織名のテイストは個人名より代替されやすい。IDEOの中身を作った人間が1/3減っている」。FはOに「個人名の指名が成立するのはScherやSagmeisterのような既に名前がある人だけ」。
論点2: 課金モデルの変化
3者が共有する診断: 人月から成果ベースへの移行には3つの構造的壁がある。
- 調達部門の壁: 大企業の調達は「1人月いくら」で入札。成果ベースの見積もりは「比較できない」と弾かれる。
- 成果定義の壁: UXのKPI(NPS、コンバージョン等)はデザイン以外の変数が多すぎて寄与を切り分けられない。McKinsey Design Indexの+32pp(SC-01)も相関であって因果ではない。
- リスク非対称の壁: 成果報酬はクライアント側の実行力に依存。16%の壁(SC-03)=PoC止まりが多い。
現実的着地点: Fは「納期短縮で総額据え置き=粗利率改善だが増収ではない」。Cは「ハイブリッド課金(基礎報酬+成果連動ボーナス)」。Oは「プロジェクトフィー(一式)ならAI効率化の果実を粗利に取り込める。人月なら効率化=売上減」。
Oの洞察: 「AI使うので安くします」は絶対に言ってはいけない。一度値下げしたら戻らない。「AIでバリエーション数が10倍になるので、検証の精度が上がります」と品質の話に転換する。
論点3: 脱中間化リスク
| ペルソナ | 脅威度 | 主要シナリオ | 防衛策 |
|---|---|---|---|
| F | 最大(経営リスク1位) | Figma AIでクライアント自作→「レビューだけ」→単価1/3。戦略コンサルがAI+デザインをパッケージ→ファームが下請けにすらならない | 上流移行(戦略コンサルと競合)、専門領域特化(ポートフォリオ集中リスク) |
| C | 緩やかな浸食 | 段階1=定型制作の内製化→段階2=成熟企業が出現→段階3=戦略判断の内製化が始まるか | 「作る」から「仕組みを作る」へ移行。84%が再設計未了を売りに |
| O | 即死リスクあり | スタジオ名の作家性は「そこそこで十分」なクライアントが内製化で即流出。年間10-15案件中3-4件流出で売上20-30%減 | 個人名の指名でのみ生存。ただし市場は極めて小さい |
Fの指摘: 脱中間化の本当の脅威は「作る仕事」ではなく「判断の自動化」。Vercelの「LLM単独で最大10%エラー」(DV-019/020)で現時点は精度限界があるが、精度は毎年上がる。
論点4: ジュニア育成とチーム構成
3者の合意(前回から深化): ジュニアの入口(量産工程)をAIに渡すと担い手が枯れる。
| ペルソナ | チーム変化 | ジュニアの代替案 | 代替案の問題 |
|---|---|---|---|
| F | パートナー/CD 1 + シニア 2-3 + AI。ジュニア席消失 | AI指示出し+レビューをOJTに/インターン短期集中でリサーチ同行+シニア観察 | 「AIに100枚出させてレビュー」≠「自分で100枚描く」か不明。インターンはbillableでない |
| C | シニア1-2 + AI。6-7人→2人チーム | ジュニアの仕事を「AIの品質管理・レビュー」に再定義 | 「チェックするだけの人に金を払うのか」とクライアントに言われる。補助金構造の崩壊 |
| O | リード1人 + AI + パートタイム専門家 | ジュニアを雇わない=経営判断として合理的 | 5年後に引退=廃業。スタジオの寿命=個人の寿命 |
Fの核心的な問い: 「個人の効率化」と「世代の再生産」は別の問題であり、前者の利益で後者の消失を正当化してはならない。
R2-R3: 相互反論(損得で崩す)
各ペルソナが出した「採用してはいけない結論」
- F: 「HCDのケイパビリティ(“釣り方”)をクライアントに売る方向にシフトすれば安泰」。ケイパビリティ構築は成功するほどリピートが消える。IDEOの売上$300M→$100M未満(DF-01)は、この転換が売上回復の証拠になっていないことを示す。
- C: 「AI導入の組織再設計を売れば安泰」。16%の壁の原因がコンサル自身の能力不足である可能性を検証していない。クライアントが自社でAI活用能力を獲得すれば発注理由がなくなる。デザイン部門がコンサル本体との社内競合に勝てるかは社内政治の問題。
- O: 「クラフトを守れば食える」。数字の裏づけがない。Scher(Pentagram)ですら予算がなければAIを使った(D-01)。「守れば食える」は因果が逆で、食える案件を取れているから守れているだけ。同時に「AI使わない」も不可。粗利でAI活用スタジオに負ける。
R4: 学術critic による理論検査・SO理論接続
理論critic(デザイン理論)の検査
3者が無自覚に共有するデザイン観:
- デザイン=分割可能な工程の束: 3者はデザインを「量産制作」「エスノグラフィ」「スタイル決定」等に分割し、各工程のAI代替可能性を個別に判定。Schon『The Reflective Practitioner』(1983)のreflection-in-actionの観点からは、制作行為そのものが問題発見の場であり、制作を分離してAIに委ねることは問題発見の契機を手放す可能性がある
[要出典確認]。ただしSimon『The Sciences of the Artificial』(1969)の近分解可能性からは、十分に構造化された部分問題は分離可能[要出典確認]。 - デザイン=請求可能な価値の生産: 請求できないデザイン行為は経営的に無意味とする枠組み。Krippendorff『The Semantic Turn』(2006)の意味生成は請求書の行項目に翻訳できるとは限らない
[要出典確認]。 - AI=道具(tool)としてのみ位置づけ: AIが探索空間そのものを構成する環境、または暫定評価を行う評価装置として機能する可能性は体系的に検討されていない。
SO理論への挑戦(前回の5突きつけの深化):
挑戦1(翻訳の本体性): 3者の新たな売り物(AI用DS設計、AIガバナンス、レビュー外注)はいずれも翻訳層そのものをサービスとして売る構図。SO理論が翻訳を「付随」と位置づけたことで、この共存戦略の理論的地位が曖昧になる。「本体でないもの」が実務の死活を握る事態をSOはどう記述するか。
挑戦2(boundary→探索の逆流の精密化): Fの「粗利率改善だが増収ではない」=boundary layerが縮退せず拡大もしない状態。Cの「16%の壁」=探索が成功してもboundary layerでの変換(全社展開)が失敗する状態。Oの「スタジオ名の作家性は即座に脱中間化」=boundary layerの正統化基盤(ブランド)が崩壊する状態。SOの「探索層の条件」と「boundary layerの条件」が因果的に接続していることを3者の報告が示す。
挑戦5(機能判定 vs authorship の共存戦略版): SOはノード2を機能で判定し主体を問わない(民主化のため)。だが共存戦略では「誰が操作対象を生成したか」が経済的価値の決定因子。authorship を理論に組み込めば序列化を正当化してしまい反終局化規範と矛盾。排除すれば実務の価値配分を説明できない。Krippendorff(主体あり)とDesign Justice(脱中心化)でカノンも割れる [要出典確認]。
教育critic(学習科学)の検査
「AIに100枚出させてレビュー」vs「自分で100枚描く」の学習効果分析:
- 「自分で100枚描く」: 操作の抵抗(素材のフィードバック)、意図と結果のずれの即時的知覚、修正操作、新たな結果の観察。Schon (1983)のreflection-in-actionそのもの
[要出典確認]。 - 「AIに100枚出させてレビュー」: 事後的評価、プロンプト修正と再生成、結果の比較判断。操作の抵抗が消え、reflection-in-actionが起動しにくい。ただしKirschner, Sweller & Clark (2006)の立場からは、AI生成物はworked exampleとして認知負荷を管理しうる。
鍵概念: fading(段階的除去): worked exampleは永続的に与え続けるものではなく、学習者の熟達度に応じて段階的に除去しなければならない(Kirschner et al. 2006)。fading なき恒久的代替は経験の省略であり学習を閉じる。3者の代替案にはいずれもfadingの設計が欠けている [要出典確認]。
個人の効率化 vs 世代の再生産の教育的解きほぐし: 個人の効率化はexpertが技能を前提として道具を使う営み(学習の問題ではなく生産性の問題)。世代の再生産はnoviceが内化のために必要な経験を積む営み(学習環境の問題)。両者は同じ組織の配分環境層を共有し、expertの効率化が「ジュニア不要」判断を導くとき、noviceの学習条件が消える。
SO理論への突きつけ(初参入の空白の深化): 初参入には発現基盤五層のうち少なくとも4層にまたがる横断的条件が必要(参加の場=配分環境層、正統的な周辺活動=探索許容環境層、移行を許す共同体構造=世界観層、時間と反復=配分環境層)。SOは層ごとの独立診断を可能にする設計だが、初参入のように複数層が同時に条件を満たさなければ成立しない事態への対処が弱い。
産業critic(職能・組織・キャリア)の検査
管轄の脱経済化の深化: Abbott『The System of Professions』(1988)の管轄理論で検査すると、3者の「上流移行」はAbbottが記述する管轄再編の古典的パターン(下位のroutine業務を放棄し上位のdiagnostic・inferential業務に撤退)と一致 [要出典確認]。ただしこの撤退が成功するのは上位の管轄が他の専門職に占有されていない場合に限られる。Fの「上流移行すると戦略コンサルと競合」はAbbottが予測する管轄競合の発生。
排除の3層構造:
- ジュニアの入口消失: Abbottの下位管轄(subordinate jurisdiction)消失=専門職の再生産メカニズム破壊。
- 中間層の蒸発: 「そこそこの仕事をそこそこの単価で」がAIの限界費用に引き寄せられて崩壊。
- 上位への再序列化: 象徴資本(Bourdieu)による排他的閉鎖(Weber/Parkin)。AIがデザインを民主化するほど、象徴資本を持つ少数者のレントは増大し、持たない多数者は市場から排除。民主化ではなく新たな階層化
[要出典確認]。
product builderは脱スキル化か responsible autonomyか: Braverman (1974)の脱スキル化(構想と実行の分離)か、Friedman (1977)/Burawoy (1979)のresponsible autonomy(経営が労働者に自律性を与えることで同意を製造)かが未判別。作業実態・裁量範囲・課金形態の調査なしには判定不可 [要出典確認]。
DesignOpsの逆説: デザインシステムの設計は高度な判断を伴うが、そのシステムに基づく運用は自動化される。DesignOpsを推進するほど、標準化した作業がAIに吸収される。Fはこの自己矛盾に言及していない。
テイストによる序列化はSO理論の「優劣化評価軸」か: FとOが「テイスト」を生存策として提示したことは、テイストの有無を新たな序列化軸として導入する。SOは「差の存在を否定しない」(SO-THEORY第2節)が「差を序列に変換する操作を批判する」。テイストによる序列化がどちらに該当するかの判定はSO理論の射程の核心に触れる。
R5: 統合(丸めない)
合意(産業の損得 × 学術の理屈が一致)
- 「上流に逃げる」は方向として正しいが、その上流の管轄を経済的に請求する方法を誰も持たない。テイスト料・CD料・ファシリテーション料を提案行に立てて通った単価データが業界に存在しない(3者一致)。学術=Abbottの管轄の脱経済化で裏づけ
[要出典確認]。 - 人月から成果ベースへの課金転換は構造的に困難であり、移行実績がほぼない。壁は調達部門・成果定義・リスク非対称の3つ(3者一致)。学術=デザインの成果が因果的に分離不可能な活動の本性に由来する構造的制約。
- 脱中間化はプラットフォームが非専門家にデザイン実行能力を移転する形で進行中。レビュー単価への縮小として顕在化(3者一致)。学術=Abbottの管轄浸食とplatform disintermediation。
- ジュニアの入口消失→担い手枯渇は前回合意の再確認。今回の深化=「個人の効率化と世代の再生産は別の位相」であり混同が最大の罠(教育critic)。fading なき恒久的AI代替は学習を閉じる。
- 効率化の果実を誰が取るかは課金モデル=boundary layerの設計次第。人月課金のまま効率化すれば自社売上減。プロジェクトフィーなら粗利に取り込める(Oの洞察)。
未解決の対立(丸めない・主成果物)
| 論点 | 立場A(産業の損得) | 立場B(学術の裁定/別読み) | 決着条件 |
|---|---|---|---|
| 上流管轄の維持可能性 | F: 上流に逃げるしかない / C: 組織設計・AIガバナンスが新管轄 / O: スタイル決定権を死守 | 理論: Schonのreflection-in-actionは工程分割を否定する可能性。産業: 上流管轄は法務/コンプライアンス/コンサル本体との競合 | 上流管轄を排他的に主張できる制度的基盤(資格、法的権限)の有無 |
| 課金転換は構造的か一時的か | 3者: 構造的 | 産業: プラットフォームが成果測定を自動化すれば壁の一部は崩れうる(Figmaがデザイン成果を自動追跡する仕組み等) | 成果ベース課金で調達部門を通過した実績の蓄積 |
| 脱中間化の速度 | F: 最大リスク / C: 緩やかな浸食 / O: 即死リスクあり | 産業: Christensenの破壊的イノベーション(ただしChristensen自体がcontested) | 段階2(成熟企業の出現)が何年で来るかの定量予測 |
| AIレビューはOJTになるか | F/C: 未検証だが代替案として提示 | 教育: 操作の外部化は内化の対象を変えるため従来の技能習得の代替にはならない。fadingなき恒久代替は学習を閉じる | AI レビュー群 vs 手作業群の技能習得の比較実験 |
| product builderの性質 | C: 人数削減の口実になりうる | 産業: 脱スキル化(Braverman) か responsible autonomy(Friedman/Burawoy) か未判別 | product builder 職の裁量・作業実態・課金形態の調査 |
| テイストによる序列化はSO的にどう扱うか | F/O: テイストが生存の核 | 理論: 説明不可能な基準による終局化の危険。SO的に差の存在は否定しないが序列への変換を批判 | SO理論がテイストの有無による序列化を優劣化評価軸と判定するかの理論的決定 |
| 共存戦略は「退却」か「変容」か | 3者: 共存の方向性は示せるが経済的維持可能性の証拠がない | 理論: 翻訳層への移行を「退却」と読むか「探索の形態変化」と読むかはSOの探索層定義の射程に依存。未決 | 共存戦略を採用した組織の3-5年後の財務・人員・技能水準の縦断調査 |
SO理論への突きつけ(今回の4論点から導かれた深化・追加)
前回の5突きつけに加え、今回の「共存戦略」テーマで3つが深化した。
- 翻訳の本体性(深化): 共存戦略そのものが「翻訳層をサービスとして売る」構図。SOが翻訳を「付随」としたことで、共存戦略の理論的地位が宙に浮く。
- boundary→探索の逆流(精密化): 課金モデルの3つの壁がboundary layerの配分条件を構造的に縮小させる具体的機序が示された。SOの「探索層の条件とboundary layerの条件を別に診る」は、3者の報告する因果接続と整合しない。
- 初参入の空白(具体化): 初参入には発現基盤五層のうち4層にまたがる横断的条件が同時に必要。SOの層ごと独立診断は、この横断的要件への対処が弱い。
新たな突きつけ(産業 critic から): テイストによる序列化がSO理論の「優劣化評価軸」に該当するかの判定が未決。SOは「差の存在を否定しない」が「差を序列に変換する操作を批判する」。テイストの有無で席と請求を配分するのは、前者か後者か。この判定はSO理論の射程の核心に触れる。
採用してはいけない結論(産業+学術が一致)
- 「上流にシフトすれば、量産の縮小は問題ない」: 上流の管轄は競合にさらされ、経済的に請求する方法を持たない。Abbottの管轄競合で裏づけ。IDEOの売上$300M→$100M未満(DF-01)は上流シフトが売上回復の証拠にならない。
- 「AIレビューをOJTとして制度化すれば、量産工程の消失を補える」: fadingの設計なしにレビューを固定すると、LPPのdisabling peripherality(周辺の固定化)になる。操作の外部化は内化の対象を変えるため従来の技能の代替にはならない(Vygotsky 1978)
[要出典確認]。 - 「AI導入の組織再設計やAIガバナンスがデザイナーの新管轄として経済的に成立する」: この管轄は法務/コンプライアンス/経営コンサルとの管轄競合にさらされ、排他的に主張できる制度的基盤がない。Kimbell (2011/2012)のdesign thinkingバズワード化批判の反復になりうる
[要出典確認]。
要確認(次に必要な実務データ)
| 項目 | なぜ必要か | 優先度 |
|---|---|---|
| 「テイスト料」「CD料」を提案行に立てて通った案件単価 | 上流管轄の経済的維持可能性の唯一の検証 | 最高 |
| 成果ベース課金で調達部門を通過した実績(業種/規模/契約形態) | 課金転換の壁が構造的か一時的かの判定 | 最高 |
| AI導入後の制作工数削減率(ファーム実績) | 「3-4割」「5-7割圧縮」は現場感覚であり計測データなし | 高 |
| PoC→全社展開の歩留まり(16%の壁の業種別実数) | 脱中間化の速度推定 | 高 |
| AIレビュー群 vs 手作業群の技能習得比較 | ジュニア育成問題の教育的判定 | 高 |
| product builder職の裁量・作業実態・課金形態の調査 | 脱スキル化 vs responsible autonomyの判定 | 中 |
| 非著名デザイナーの作家性→収入の変換データ | 象徴資本による市場閉鎖の範囲の判定 | 中 |
| C-01(McKinsey “Designing for Machines” 一次本文) | product builder概念の実態確認 | 中 |
次に読むべき一次文献
- Schon, D. (1983). The Reflective Practitioner. Ch.3-5 — 制作行為におけるreflection-in-actionの具体的記述。量産制作が反省的実践を含みうるかの判定に使う。
- Abbott, A. (1988). The System of Professions. — 管轄の動態分析がAIによる管轄浸食に適用可能かの検討。
- Sennett, R. (2008). The Craftsman. — クラフトの反復と技能習得の関係。Oの作家性・クラフト論の理論的基盤。
- Fuller, A. & Unwin, L. (2003). “Learning as Apprentices in the Contemporary UK Workplace.” — expansive/restrictive apprenticeshipの枠組み。量産工程が学習を開くか閉じるかの判定基準。
- Billett, S. (2001). Learning in the Workplace. — LPPを職場環境に拡張。量産工程の教育的価値の実証的枠組み。
参照文献
産業ペルソナはbusiness-onlyで論じ、学者名・学説を一切根拠にしていない(ビジネス根拠=数値・案件・クライアント反応は industry.md/voices.md に URL つきで収録)。以下のカノンはすべて学術critic(R4)が理論接続のために用いたもので、多くが記憶ベースの二次参照(
[要出典確認])。
デザイン理論
- Simon, H. A. (1969). The Sciences of the Artificial. MIT Press. near-decomposability, bounded rationality.
[要出典確認] - Schon, D. A. (1983). The Reflective Practitioner. Basic Books. reflection-in-action, knowing-in-action.
[要出典確認] - Cross, N. (1982/2006). “Designerly Ways of Knowing.” Design Studies / Springer.
[要出典確認] - Dorst, K. & Cross, N. (2001). “Creativity in the design process: co-evolution of problem-solution.” Design Studies 22(5): 425-437.
- Buchanan, R. (1992). “Wicked Problems in Design Thinking.” Design Issues 8(2): 5-21.
[要出典確認] - Krippendorff, K. (2006). The Semantic Turn. CRC Press.
[要出典確認] - Costanza-Chock, S. (2020). Design Justice. MIT Press.
- Kimbell, L. (2011/2012). “Rethinking Design Thinking” I/II. Design and Culture.
[要出典確認]
教育学・学習科学
- Lave, J. & Wenger, E. (1991). Situated Learning. Cambridge University Press. LPP.
[要出典確認] - Dreyfus, H. & Dreyfus, S. (1986). Mind over Machine. Free Press. 地位contested.
[要出典確認] - Vygotsky, L. S. (1978). Mind in Society. Harvard University Press. ZPD, 内化.
[要出典確認] - Kirschner, P., Sweller, J. & Clark, R. (2006). “Why Minimal Guidance During Instruction Does Not Work.” Educational Psychologist 41(2): 75-86. worked example, fading.
[要出典確認] - Papert, S. (1980). Mindstorms. Basic Books. constructionism.
[要出典確認] - Dewey, J. (1938). Experience and Education. Kappa Delta Pi.
- Collins, A., Brown, J.S. & Newman, S.E. (1989). “Cognitive Apprenticeship.” In Resnick (ed.), Knowing, Learning, and Instruction.
[要出典確認] - Freire, P. (1970). Pedagogy of the Oppressed. Herder & Herder.
専門職論・労働社会学
- Abbott, A. (1988). The System of Professions. University of Chicago Press.
[要出典確認] - Braverman, H. (1974). Labor and Monopoly Capital.
[要出典確認] - Friedman, A. (1977). Industry and Labour.
[要出典確認] - Burawoy, M. (1979). Manufacturing Consent.
[要出典確認] - Bourdieu, P. (1979/1993). Distinction / The Field of Cultural Production.
[要出典確認] - Parkin, F. (1979). Marxism and Class Theory. exclusionary closure.
[要出典確認] - Ries, E. (2011). The Lean Startup.
[要出典確認]
産業データ(台帳ID付き)
- DF-01: IDEO縮小(Fortune取材, 2026-05-16)
- SC-01: McKinsey Design Index +32pp(自社調査, partial)
- SC-03: Deloitte 完全再設計済み16%(自社調査, n/国/期間非開示
[要一次検証]) - DV-005/006/008/009/019/020: Figma / Vercel 開発者証言
- D-01: Paula Scher, performance.gov (Creative Bloq, 2024-12-14)
- T1-BLS-01: グラフィックデザイナー +2%, AI自動化明記
- IS-01: NC State, AI影響50%超で作家性喪失の転換点
SO理論
- so理論 v10.
source/SO-THEORY.md. 探索層六ノード, 三層, 終局化, boundary layer, 最小翻訳, 再参入設計, 優劣化評価軸, 発現基盤五層. 学説出典種別: primary(理論原稿, 未査読).
更新方針
本ノートは designer-role-ai-roundtable の続編として独立ページ。検証キューの実務データが得られたら追記し updated を更新。SO理論の改修(翻訳の本体性、初参入、テイスト序列化の判定)が進んだら反映。産業ペルソナ apparatus は .claude/skills/designer-role-roundtable+各 perspective skill(business-only)。