Shuichiro Ogawa
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ノート · 更新 2026-11-03 · Markdown 版

グループインタビューのチェックリスト:準備するもの、聞くこと、発注者への報告まで

使う人や買う人を数人ずつ集めるグループインタビュー(フォーカスグループ、座談会)を、計画から募集、参加者どうしの守秘、謝礼、進行と司会、会場と観察者、記録、分析と報告まで段階に分け、1 対 1 のヒアリングに加えて用意するものと確かめることをチェックリストにした。画面操作の確認を加えるときに足すものも最後にまとめた。

目次(11)
  1. 1 対 1 のヒアリングと何が違うのか
  2. 何グループ、何人で組むか
  3. 誰を同じ部屋に入れるか
  4. 参加者どうしの守秘をどう説明するか
  5. 謝礼をいくら、どう渡すか
  6. 進行の台本に何を書き、誰が司会するか
  7. 会場と観察者をどう扱うか
  8. 記録とデータをどう扱うか
  9. 分析と報告で、何をどう数えるか
  10. 画面操作の確認を加えるとき、何を足すか
  11. このリストの根拠はどこまで強いか

1 対 1 のヒアリングと何が違うのか

グループインタビュー(フォーカスグループ、座談会)は、使う人や買う人を数人ずつ集め、司会者の進行で話し合ってもらい、何を作るかの判断材料にする方法である。 1 対 1 のヒアリングの準備物(ユーザーヒアリングのチェックリスト:準備するもの、聞くこと、発注者への報告まで)は、ほとんどそのまま要る。 違うのは、データが一人の発言ではなく参加者どうしのやりとりから生まれる点である。 Kitzinger(1994、要旨)は、フォーカスグループを 1 対 1 の面接や質問紙から分ける唯一の特徴を参加者間の相互作用とし、それを明示的に探り、使うよう論じた。

やりとりは、得るものと失うものの両方を生む。 米国の黒人男性 350 人を、グループと 1 対 1 の面接に無作為に割り当てた比較では、一回の実施あたりで挙がった項目の数は同程度で、一人あたりでは 1 対 1 の方が幅広い項目を出した(Guest ら 2017、IJSRM、要旨)。 一方で、個人的で機微な打ち明け話のいくつかの種類はグループの方が起きやすく、グループでしか出なかった主題もあった。 水政策の意思決定者 55 人の比較では、とても機微な話題について、ほかの参加者から非難されるおそれがあるのに話す理由がないときはグループで話す量が減り、大事な情報を交換できる見込みがあるときは増えた(Wutich ら 2010、要旨)。 グループを選ぶかどうかは、聞きたいことがこのどちらに近いかで決まる。

グループの話し合いでは、画面の使いやすさは確かめられない。 NN/g は、フォーカスグループでは参加者が見せられたものや覚えていることに意見を言うだけなので、使いやすさについて客観的な情報は得られないとする(Fessenden 2022)。 Nielsen(1997)も、司会者の実演を見ることは製品を実際に使うこととまったく違うと書いている。 画面操作を確かめるときに何を足すかは、最後の節にまとめた。

このノートは、発注を受けてグループインタビューを行い、発注者に報告するまでを段階に分け、1 対 1 のヒアリングに加えて用意するものと確かめることをチェックリストにした。 根拠は、学術の文献 18 本、公的機関と標準と業界規範 16 件、調査会社と業界誌 24 件、実務家の一次証言 9 件である。 数値と規定は、本文が取れた資料では本文の該当箇所で照合し、本文が取れなかった学術の文献は年のあとに「要旨」と添えて、要旨の範囲だけで使った。 業界規範は会員に課す自主規制であり、法令ではない。

何グループ、何人で組むか

グループの数には、実証の根拠がある。 健康行動についての 40 グループを分析した研究では、すべての主題の 80% 以上が 2〜3 グループで、90% が 3〜6 グループで見つかり、最も多く出た主題は 3 グループですべて出た(Guest ら 2017、Field Methods、要旨)。 Hennink ら(2019、要旨)は 10 グループを分析し、新しい論点が出なくなるコードの飽和は 4 グループで来たが、論点の中身を理解しきる意味の飽和にはもっと要ったと報告した。 属性で層に分けたときは、層ごとに 1 グループで論点が見つかり、2 グループでより深く理解でき、それ以上はほとんど増えなかった。 ところが、保健のフォーカスグループ研究 220 本のうち、グループの数に理由を書こうとしていたのは 37 本(17%)だった(Carlsen と Glenton 2011)。

1 グループの人数は、手引きによって幅がある。 NN/g は 6〜9 人で 1〜2 時間とし(Fessenden 2022)、User Interviews 社の手引きは 1 グループ 5〜10 人とする。 日本の調査会社の解説は 1 回 4〜8 人(マクロミル、クロス・マーケティング)で、協力者向けの案内では座談会を最大 8 人としている(インテージ)。 オンラインでは、JMRA の手引きが、司会者が一人ひとりに目を配れる人数を勧め、表情を見やすくするなら 3〜4 人以内という目安を挙げる(オンライン定性調査ファーストステップガイド)。 GOV.UK は、3〜8 人の小さなワークショップを、意見や人気を測るフォーカスグループとは別のもの(利用者に何が合うかを見つける場)として扱っている。

グループの組み方は、何を比べたいかで決める。 サービスデザインの実務書は、参加者を 4〜12 人(6〜8 人が理想とされる)とし、話しやすくするために似た人どうしでそろえることが多く、比べるために少なくとも 2 つ目のグループを置くよう勧める(Stickdorn ら、This Is Service Design Doing「Focus Groups」)。 日本の業界規範は、発注者に出す企画書に、グループの設計と 1 グループあたりの人数、対象条件、実施日時、会場、所要時間を書くよう定める(JMRA、営業企画)。

  • グループで聞く理由(やりとりから生まれる意見、話し合いで出る主題)を書き、1 対 1 で足りないかを確かめた(Kitzinger 1994 要旨、Guest ら 2017 IJSRM 要旨)
  • 機微な話題なら、グループで話す理由が参加者にあるかを確かめた(Wutich ら 2010 要旨)
  • 画面の使いやすさを確かめたいなら、グループではなく別の工程を組んだ(NN/g)
  • 層(属性の組み合わせ)を決め、層ごとに少なくとも 2 グループを置いた(Hennink ら 2019 要旨)
  • グループの数とその理由を書いた(Guest ら 2017 Field Methods 要旨、Carlsen と Glenton 2011)
  • 1 グループの人数と時間を、対面かオンラインかに合わせて決めた(NN/g、JMRA のオンラインの手引き)
  • 企画書に、グループの設計と人数、対象条件、日時、会場、所要時間を書いた(JMRA)

誰を同じ部屋に入れるか

グループでは、誰と誰が同席するかもデータを左右する。 JMRA のガイドラインは、参加者が互いに知り合いでないよう注意するよう定め、知り合いどうしが有益なときだけ発注者の合意で例外にする(実査管理 1.1)。 カナダ政府の世論調査の標準は、互いに知り合いの人を同じ調査に入れない(別々の回なら可)とし、過去 6 か月以内に質的調査に参加した人と、過去 5 年で 5 回以上参加した人を除くと定める。 MRS の募集会社向けの手引きは、過去の参加を記録し、新しい参加者を使うよう求め、事前の確認の電話を欠かせないとする。 オンラインでの募集の注意もある。 同じ手引きは、SNS で募集するときに条件の詳細を載せないよう求める(条件に合わせて答えたくなるのを避けるため)。 保護者のグループをオンラインで募った研究では、同じ IP アドレスかメールからの重複した応募が目立ち、謝礼をやめて 1 つの IP から 1 回しか答えられないようにすると、同じ IP からの重複は 47.1% から 7.9% に下がった(Quach ら 2013)。

来ない人が出ることも前提にする。 NN/g が UX の実務家に聞いた調査では、無断欠席は平均 11% で、9 人に 1 人が来なかった(Nielsen 2003)。 調査会社の実務家の寄稿は、責任感のある層なら 10 人に声をかけて 8 人、忙しい層なら 6 人、当てにならない層なら 5 人の出席を見込むとする(Schild 2003)。 多めに集めた結果、席がなくて帰ってもらう人にも、約束した謝礼は払う(カナダ政府の標準)。

  • 参加者どうしが知り合いでないことを、募集と当日の受付で確かめた(JMRA、カナダ政府の標準)
  • 関連する職業の人、直近に質的調査へ参加した人、参加回数の多い人を除く条件を決めた(カナダ政府の標準、MRS)
  • SNS の募集文に、条件の詳細を書いていない(MRS)
  • オンライン募集なら、同じ IP やメールからの重複応募を確かめる手順を決めた(Quach ら 2013)
  • 欠席を見込んで多めに集め、帰ってもらう人への謝礼と、遅刻者の扱いを募集時に知らせた(カナダ政府の標準、Schild 2003)
  • 内向的な人と外向的な人の偏りが出ないよう、スクリーナーで確かめた(User Interviews)

参加者どうしの守秘をどう説明するか

グループでは、ほかの参加者に話したことが外に出ないと、聞き手は約束できない。 カリフォルニア大学バークレー校の倫理審査委員会の手引きは、研究者は守秘を守れても、ほかの参加者が同じようにするとは保証できないと説明し、聞いたことを外で繰り返さないよう参加者に頼むことを、同意書と事前の説明の両方に書くよう求める。 ドイツの市場調査 4 団体の指針は、グループの中で参加者を姓で呼ばず、冒頭で姓を名乗らないよう伝えるよう定める。 JMRA のオンラインの手引きは、募集の段階で、URL を第三者に教えないこと、録画、録音、画面の記録をしないことの承諾を得て、開始前にも機密保持を全員に念押しするよう書く。 発売前の製品を見せるなら、情報が漏れるおそれを発注者に理解してもらう。

  • 説明文と同意書に、ほかの参加者の発言を外で繰り返さないよう頼むことと、聞き手はそれを保証できないことを書いた(UC Berkeley CPHS)
  • 参加者を姓で呼ばない、表示名をフルネームにしない、と決めた(ドイツ 4 団体の指針、JMRA のオンラインの手引き)
  • オンラインなら、URL を教えない、録画や画面の記録をしない、周りに人がいない場所で参加する、の承諾を取った(JMRA のオンラインの手引き、UC Berkeley CPHS)
  • 発売前の製品やコンセプトを見せるなら、漏えいの危険と対策を発注者と合意した(JMRA のオンラインの手引き)
  • 録音を断る人が出たときの扱いを決めた(UC Berkeley CPHS)

謝礼をいくら、どう渡すか

謝礼の扱いは 1 対 1 とほぼ同じだが、グループ固有の点がある。 2018〜2024 年の保健のフォーカスグループ研究 80 件を調べたメタ研究では、金銭の謝礼を使っていたのは 43% だった(Lander ら 2025)。 カナダ政府の標準は、質的調査の参加者には通例謝礼を出すとし、多めに集めた結果帰ってもらう人にも、募集時に約束した謝礼を渡すよう求める。 日本の調査会社が協力者に示す目安は、1〜2 時間で 8,000 円前後である(インテージ、ユーザーヒアリングのチェックリスト:準備するもの、聞くこと、発注者への報告まで と同じ資料)。

  • 謝礼の額を決め、帰ってもらう人と遅刻者への支払いを募集時に知らせた(カナダ政府の標準)
  • 会場までの交通費など、参加にかかる負担を謝礼に含めるかを決めた(カナダ政府の標準)

進行の台本に何を書き、誰が司会するか

グループの進行には、一人が場を取ってしまう危険がある。 元 Expedia の UX リサーチ部長の Eskenazi は、声の大きい参加者が司会者に代わって場を仕切る例を挙げ、ほかの人の答えを見る前に各自が入力する形にする対策を書いた。 サービスデザインの実務書は、司会者が一人に場を支配させず、静かな人を巻き込み、グループの目的は合意ではなく異なる見方を理解することだと参加者に伝えるよう勧める。 調査会社の実務家の寄稿は、知り合いが同席すると隣に座って私語をしがちなので名札で席を事前に決め、話さない人には作業を頼むか、ほかの参加者と組ませるとしている(Murphy 2001)。

誰が司会するかでもデータが変わる。 Cisco Meraki のリサーチ責任者 Pande は、研究者でない人が司会したグループのデータが良くなかったと話している(Portigal のポッドキャスト)。 JMRA のガイドラインは、司会者が実査の前に調査の目的、刺激物、投影法に通じているよう求め、司会者はしかるべき教育を受けた人か企画のテーマを熟知した人で、発注者の了解を得た場合に司会できるとする(実査管理 1.4)。 健康研究でフォーカスグループを行った研究者 9 人に聞いた研究は、患者のグループでは自己紹介に十分な時間を取ること、参加者が書くカードや優先順位づけを使うことを挙げた(Tausch と Menold 2016)。

  • 冒頭で、合意を作る場ではなく、違う見方を聞く場だと伝える台詞を書いた(This Is Service Design Doing)
  • 声の大きい人と話さない人への対応(各自の先行入力、名札の席順、指名の仕方)を決めた(Eskenazi、Murphy 2001)
  • 司会者を、調査の目的と刺激物に通じた人にし、発注者の了解を得た(JMRA)
  • 自己紹介の時間を十分に取った(Tausch と Menold 2016)
  • 記録係を置き、席次表、場の雰囲気や身ぶりなど録音に残らないことを書いてもらう段取りにした(User Interviews)

会場と観察者をどう扱うか

会場は事前に見ておく。 JMRA のガイドラインは、初めて使う会場を使用前に点検し、結果を文書に残すよう定める(実査管理 1.2)。 発注者が観察するなら、その取り決めも準備物になる。 JMRA の観察のお願いは、観察の希望を募集開始の前に伝え、参加者を知っている人は観察をやめるよう求める。 ドイツ 4 団体の指針は、観察者に事前に誓約書へ署名してもらい、観察は関係者しか入れない閉じた部屋で行うとしている。 英国 MRS の定性調査の手引き(2011 年版)は、観察するのは理想的にはグループの半分までにとどめ、1 グループの観察者は理想的には 1 人とし、ミラーの裏の物音や光がグループの雰囲気を壊しうると観察者に伝えるよう勧める。

観察する人の側にも作法がある。 調査会社の実務家は、開始 45 分前に着いて参加者と鉢合わせしないようにする(Henderson 1990)、ガイドを読んで知りたいことを 3〜5 個に絞り、グループごとに短く、1 日の終わりに長めに振り返る(Greenbaum 1995)、と書いている。 英国の業界誌の寄稿は、1 回しか見ない発注者が印象的な発言を答えと受け取りやすいと批判している(Cooper 2010)。 観察者がいること自体が参加者に影響することもある。 画面を使う課題の実験では、口をはさまない観察者が 2 人いると、生理的なストレス反応が出て、一部の成績が下がり、感情にも影響した(Sonderegger と Sauer 2009、要旨)。

オンラインのグループでは、会場の代わりに通信の準備が要る。 JMRA のオンラインの手引きは、安定した会議システムを選び、発注者どうしの連絡を参加者から見えない経路にし、参加者の世話、技術、発注者の世話の 3 つの係を分け、3 日前までに接続を試すよう書く。 対面、ビデオ、チャットのグループを比べた研究では、仮想のグループの費用の節約はわずかで、募集の速さは変わらず、来場の率は対面 94%、ビデオ 81%、チャット 69% だったが、参加者の地域は広がった(Rupert ら 2017)。 内容は大きく変わらず、オンラインの方が機微な話題を率直に話した例もある(Woodyatt ら 2016、要旨)。

  • 初めての会場を事前に点検し、記録した(JMRA)
  • 発注者の観察の希望を募集開始の前に聞き、観察者の人数と誓約書を決めた(JMRA、ドイツ 4 団体の指針、MRS)
  • 観察者に、早めに着く、静かにする、参加者を知っていれば外れる、知りたいことを絞る、を伝えた(Henderson 1990、Greenbaum 1995、JMRA)
  • 発注者が 1 グループだけで結論を出さないよう、複数のグループを見てもらう段取りにした(Cooper 2010)
  • 各グループ後と 1 日の終わりに、観察者と司会者の振り返りを入れた(Greenbaum 1995)
  • オンラインなら、会議システム、裏の連絡経路、係の分担、接続テストを決めた(JMRA のオンラインの手引き)
  • 複数の話者を後で聞き分けられるよう、席次表と話者の記録を用意した(User Interviews)

記録とデータをどう扱うか

グループの記録には、複数の参加者が一度に映る。 MRS の手引き(2011 年版)は、声や外見の記録も個人データだとし、参加者の同意なしに発注者に渡す資料や報告に入れる資料(発言の逐語録を含む)を匿名化するよう求める。 ドイツ 4 団体の指針は、発注者が受け取った録画を 3 か月以内に消すとしている。 カナダ政府の標準は、記録を 3 年保存し、二次記録ができれば一次記録は 12 か月後に破棄してよいとする。 保存期間の決め方は資料ごとに違うので、発注者との契約で決める。

分析と報告で、何をどう数えるか

分析の単位は、グループか個人かを先に決める。 Morgan(2010、要旨)は、やりとりはデータを生むうえで欠かせないが、分析と報告でやりとりを前面に出す必要は必ずしもなく、目的が決めるとした。 報告では数を扱いにくい。 カナダ政府の標準は、質的調査の結果は母集団へ統計的に推計できないとし、推計できるかのような印象を避けるために、報告に割合や正確な比率を載せないよう求める。 企画の段階で、グループを同質にするか異質にするかの基準と理由を示すよう求めている。 定性調査の実務家たちの心得を集めた寄稿では、調査の目的に直接関わる項目から先に分析し、分析の時間を予想より多く見込むよう勧めている(Fuller 2000)。

  • 分析の単位(グループか個人か)と、やりとりを分析するかを目的から決めた(Morgan 2010 要旨)
  • 報告に割合や正確な比率を載せず、結果を母集団に推計できないことを書いた(カナダ政府の標準)
  • グループの数、人数、組み方(同質か異質か)の理由を書いた(カナダ政府の標準、Carlsen と Glenton 2011)
  • 一人の強い発言と、複数のグループで出た主題を書き分けた(Cooper 2010)

画面操作の確認を加えるとき、何を足すか

ヒアリングの中で、試作やアプリを参加者に操作してもらい、その様子を確かめる工程を足すことがある。 このとき、話を聞く準備に加えて、操作する物、課題、記録、評価の準備が要る。

グループで操作させる場合は、形を先に決める。 グループで話す場では、参加者が自分で製品を探る機会がほとんどない(Nielsen 1997)。 そのため、グループの前後に 1 対 1 の操作の確認を別に組むか、操作の形をグループ用に変える。 2 人で一緒に操作しながら話してもらう方法(constructive interaction)を、一人の思考発話と比べた研究では、見つかった問題の数と種類はおおむね同じで、違いは問題の見つかり方、課題の成績、参加者の感じ方に少し出ただけだった(van den Haak ら 2004、要旨)。 Nielsen(2007)は、5〜10 人に同時に別々の端末で操作してもらう方法を紹介し、ふつうは進行役が人数分要ること、狭い仕切りの中では思考発話が成り立たないので声に出して考える指示を出さないことを書いている。 ウェールズの実務家の記事は、グループのうち一人に操作と思考発話をしてもらい、ほかの人は付箋かチャットで静かにコメントする形を紹介している(Quatermass、ProMo Cymru)。

操作する物は、壊れても止まらないように用意する。 GDS の実務家たちは、利用者に見せる試作でダミーの文章(Lorem Ipsum)やふざけた名前を使わず、詰めの段階では実際のデータを使い始め、うまくいかない案から戻れるよう別の案を持っておくよう勧める(Lanman ら 2015)。 NN/g は、クリックできる試作では参加者がしうる操作ごとに応答を事前に作る必要があり、静止画の試作では設計を知る人がその場で応答を返す(Wizard of Oz など)と書く(Pernice 2016)。

データとアカウントは、本人の情報を使わない方法を先に決める。 NN/g は、質的な確認なら参加者自身のデータも検討できるとしたうえで、ダミーのデータも現実らしくし、報告の画面では個人情報をぼかすよう書く(Schade 2016)。 MeasuringU は、利用者に自分の情報を使わせるのは難しく、禁じられていることも多いとして、購入ボタンの手前で止める、プリペイドカードを使う、などの代わりの方法を挙げる(Sauro 2014)。 英国の事業会社 dxw は、機微な個人データを扱うサービスで、実データしかないと他人の私的な情報を見せてしまうおそれがあったため、現実らしい架空のデータを作って試した。 GOV.UK は、できるときは参加者自身のデータと書類を使うよう勧め、実データはサービスが扱えて個人データを守れるときに限るとしている。

課題は、答えを教えない形で書く。 NN/g は、課題を現実的な場面に置き、行動を促し、画面の語句や手順を手がかりにしないよう書く(McCloskey 2014)。 商用の 9 チームの結果を分析した研究では、見つかった問題の割合は参加者の数とは関係せず、課題の数と関係した(Lindgaard と Chattratichart 2007、要旨)。 note 株式会社のリサーチャーは、課題を作ったら自分で通しで試すことを欠かさないとしている(仙田 2022)。

思考発話は、説明と練習を用意し、介入の仕方を決める。 NN/g は、多くの参加者には促しが要り、短い見本の動画で期待を伝えられるが、促しや確認の質問は行動を偏らせうるとする(Nielsen 2012)。 Boren と Ramey(2000、要旨)は、実務の思考発話が理論(Ericsson と Simon)どおりに行われていないことを指摘した。 操作中に話してもらうか、終わってから振り返ってもらうかを 29 の研究でメタ分析した Hertzum(2024、要旨)によれば、操作中なら課題の時間は延びるが全体の時間は短く、振り返りなら説明や改善案が多く出る。

画面の記録と個人情報には、話を聞くときより多くの注意が要る。 GOV.UK は、ユーザビリティテストの画面写真を外で使うなら、個人データの映っていないものを選ぶか、映った個人データをぼかすよう書く。 米国 GSA の手引きは、画面共有の前に、録られたくない物を閉じてもらうよう書く。 日本の個人情報保護委員会のガイドラインは、本人が分かる映像と、氏名を含む音声を個人情報の例に挙げている。 発売前の製品なら秘密保持の取り決めも用意する。 米国 NIST の雛形は、秘密保持契約を任意の付録として載せている(NISTIR 7742)。

遠隔で操作してもらうなら、技術の確認を本番から切り離す。 米国国勢調査局の研究者は、ソフトの導入手順をメールで送ったら、複雑すぎるとして参加を断られたので、本番の前に手順を一緒にたどる技術確認の回を設けると案内を変えたと報告している(Olmsted-Hawala と Nichols 2021)。 同じ報告は、録画中に参加者にメールを開かせないよう、同意と事後のアンケートを 1 つの URL にまとめたとしている。 NN/g は、できれば参加者ごとに前日に 15 分のオンラインの練習の回を設けるよう書く(Moran と Pernice 2020)。 ウェールズの社会福祉のチームは、ビデオが技術に不慣れな人の参加の妨げになったので、電話の回に切り替えた。 支援技術を使う人には、本人の機器で参加してもらうのが望ましい(GOV.UK)。

観察者は、操作の確認では特に参加者に影響する。 口をはさまない観察者がいると、生理的なストレス反応が出て、一部の成績が下がった(Sonderegger と Sauer 2009、要旨)。 食べログのチームは、参加者が大勢と向き合わないよう、見学者を別の会議システムへの配信で見せている(日下 2023)。

人数と評価は、目的で決める。 5 人で問題の約 85% が見つかるという目安は、利用者の 31% が出会う問題を前提にした計算で、問題を見つける目的に限られ、製品の比較や完了率の推定には当てはまらない(Sauro 2010、Nielsen 2000)。 問題の重大度は、頻度、影響、持続性から付け、評価者が独立に付けるよう勧められている(Nielsen 1994)。 同じ方法で同じ画面を評価しても、評価者 2 人が見つけた問題の一致は平均で 5〜65% にとどまる(Hertzum と Jacobsen 2001、要旨)。 米国 NIST の雛形は、助けなしで、決めた時間内に終えた課題の数を記録する項目に挙げている(NISTIR 7742)。

  • グループで操作させるか、1 対 1 の操作の確認を別に組むかを決めた(Nielsen 1997、Nielsen 2007)
  • 試作の文面と名前を現実らしくし、うまくいかない案の代わりの版を用意した(Lanman ら 2015)
  • 試作の応答(クリックできる範囲、人が代わりに返す応答)を決め、通しで試した(Pernice 2016、仙田 2022)
  • テスト用アカウントとダミーデータ(現実らしい名前と値)を用意し、本人の決済情報や個人情報を使わない方法を決めた(Schade 2016、Sauro 2014、dxw)
  • 課題を、現実の場面に置き、答えを教えない形で書き、成功の基準と時間の上限を決めた(McCloskey 2014、NISTIR 7742)
  • 思考発話の説明と練習の時間を台本に入れ、介入の仕方を決めた(Nielsen 2012)
  • 画面録画を同意書の別の欄にし、画面共有の前に通知や個人のファイルを閉じてもらう段取りにした(digital.gov、GOV.UK)
  • 報告と抜粋動画で、画面に映った個人情報をぼかす手順を決めた(GOV.UK、Schade 2016)
  • 発売前の製品なら、秘密保持の取り決めを用意した(NISTIR 7742)
  • 遠隔なら、本番と別に短い技術確認の回を設け、電話への切り替えを用意した(Olmsted-Hawala と Nichols 2021、Moran と Pernice 2020、ウェールズの社会福祉のチーム)
  • 支援技術の利用者には、本人の機器と設定で参加してもらう段取りにした(GOV.UK)
  • 見学者を参加者と同じ画面に入れず、別の経路で見せた(日下 2023)
  • 人数を、問題を見つける目的か、数値を測る目的かで決めた(Sauro 2010)
  • 問題の重大度の付け方を決め、複数の人が独立に付ける段取りにした(Nielsen 1994、Hertzum と Jacobsen 2001 要旨)

このリストの根拠はどこまで強いか

グループの人数と数には、実証の根拠がある(Guest ら 2017、Hennink ら 2019)。 ただし、どちらも保健の研究の結果で、デザインのヒアリングで同じ数になるかは確かめられていない。 知り合いの排除、観察者の数、録画の消去の期限、オンラインの人数の目安は、業界規範と手引きの規定で、効果を測ったものではない。 観察者が参加者の発言を変える大きさを、フォーカスグループで測った研究は、このノートの収集では見つからなかった。 3 人以上のグループで画面操作を確かめる方式を、1 対 1 と比べた研究も見つからなかった。 画面操作の確認の項目のうち、思考発話、評価者のばらつき、課題の数、観察者の影響は実証の結果に基づくが、試作とデータの準備、遠隔の段取り、映り込みの扱いは、手引きと実務家の経験に基づく。

関連ノート

未検証事項

主要主張に未検証の記述は残していない。 次の学術の文献は本文が 3 経路以上で取れず(出版社が機械の取得を断った)、要旨の範囲で書いた。 Boren と Ramey(2000)、Guest ら(2017、Field Methods)、Guest ら(2017、IJSRM)、Hennink ら(2019)、Hertzum(2024)、Hertzum と Jacobsen(2001)、Kitzinger(1994)、Lindgaard と Chattratichart(2007)、Morgan(2010)、Sonderegger と Sauer(2009)、van den Haak ら(2004)、Woodyatt ら(2016)、Wutich ら(2010)。 規範のうち、MRS の定性調査の手引きは 2011 年版、JMRA のオンラインの手引きは 2021 年の第 1 版で、現行の版との違いは確かめていない。

参照文献

アクセスはすべて 2026-11-03。台帳と検証の記録は source/review/group-interview-checklist/ の papers.md と industry.md。

学術

  • Boren, Ted, and Judith Ramey. 2000. “Thinking Aloud: Reconciling Theory and Practice.” IEEE Transactions on Professional Communication 43 (3): 261–278. https://doi.org/10.1109/47.867942
  • Carlsen, Benedicte, and Claire Glenton. 2011. “What about N? A Methodological Study of Sample-Size Reporting in Focus Group Studies.” BMC Medical Research Methodology 11: 26. https://doi.org/10.1186/1471-2288-11-26
  • Guest, Greg, Emily Namey, and Kevin McKenna. 2017. “How Many Focus Groups Are Enough? Building an Evidence Base for Nonprobability Sample Sizes.” Field Methods 29 (1): 3–22. https://doi.org/10.1177/1525822X16639015
  • Guest, Greg, Emily Namey, Jamilah Taylor, Natalie Eley, and Kevin McKenna. 2017. “Comparing Focus Groups and Individual Interviews: Findings from a Randomized Study.” International Journal of Social Research Methodology 20 (6): 693–708. https://doi.org/10.1080/13645579.2017.1281601
  • Hennink, Monique M., Bonnie N. Kaiser, and Mary Beth Weber. 2019. “What Influences Saturation? Estimating Sample Sizes in Focus Group Research.” Qualitative Health Research 29 (10): 1483–1496. https://doi.org/10.1177/1049732318821692
  • Hertzum, Morten. 2024. “Concurrent or Retrospective Thinking Aloud in Usability Tests: A Meta-Analytic Review.” ACM Transactions on Computer-Human Interaction 31 (3): 1–29. https://doi.org/10.1145/3665327
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書いた人:小川 修一郎(デザイン研究者/デザインコンサルタント) 経歴を見る →