Shuichiro Ogawa
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ノート · 更新 2026-11-03 · Markdown 版

ユーザーヒアリングのチェックリスト:準備するもの、聞くこと、発注者への報告まで

使う人や買う人へのユーザーヒアリングを、計画から募集、同意、謝礼、質問ガイドと試し聞き、当日の記録、データの保管、分析、発注者への報告まで 9 段階に分け、段階ごとに用意するものと確かめることをチェックリストにした。

目次(12)
  1. 聞き方の作法だけでは、なぜ足りないのか
  2. 発注者と何を決めておくか
  3. 来るのは本当に条件に合う人か
  4. 同意で何を知らせ、何を残すか
  5. 謝礼をいつ、何で、いくら渡すか
  6. 質問ガイドに何を書き、どう試すか
  7. 当日、誰が何を記録するか
  8. データをいつまで持ち、どう消すか
  9. 分析をいつ、誰と行うか
  10. 発注者に何を、どの形で渡すか
  11. 画面操作の確認を加えるとき、何を足すか
  12. このリストの根拠はどこまで強いか

聞き方の作法だけでは、なぜ足りないのか

ユーザーヒアリングは、作る前や作りながら、使う人や買う人に会って話を聞き、何を作るかの判断材料にする行為である。 聞き方の作法(意見でなく過去の出来事を聞く、誘導しない、黙って聞く)は、学術と産業でほぼ一致している(ユーザーヒアリングの進め方:学術界と産業界は何を共有し、どこで分かれるか)。 作法を身につけた聞き手でも、ヒアリングは失敗する。 来たのが条件に合わない人だった。 録音のボタンが押されていなかった。 同意を取った証拠が残っていない。 報告を読んだ発注者が、一人の発言を全体の傾向と受け取った。 どれも、聞いている最中の技術ではなく、その前後の準備で防ぐものである。

このノートは、発注を受けてヒアリングを行い、発注者に報告するまでを 9 段階に分け、段階ごとに用意するものと確かめることをチェックリストにした。 対象は、UI、サービス、事業の判断のために、使う人や買う人に 1 対 1 で聞くヒアリングである。 発注者は、社外のクライアントでも、社内で調査を頼んだチームでもよい。

根拠は 4 種類の資料から取った。 学術の文献 28 本(査読論文と方法論のレビュー)、公的機関の手引きと法令の手引きと調査倫理の業界規範 27 件、調査会社とコンサルの資料 26 件、実務家の一次証言 18 件である。 数値と規定は、本文が取れた資料では本文の該当箇所で照合した。 本文が取れなかった学術の文献は、年のあとに「要旨」と添え、要旨の範囲だけで使った。 チェックリストの各項目には、根拠の出どころを括弧で添えた。 出どころが業界規範の場合、その規範は会員に課す自主規制であり、法令ではない。

発注者と何を決めておくか

ヒアリングの目的は、発注者と書面で合意しておく。 GOV.UK の手引きは、各ラウンドに明確な目的を置き、チームで合意し、始める前に「どの思い込みを確かめたいか」と「次の判断のために今何を知る必要があるか」を把握するよう求める。 サービスデザインの実務書は、現場に出る前に組織の中で聞くことから始め、関係者が問題の理解をそろえているかを確かめるとする(Stickdorn ら、This Is Service Design Doing の方法頁)。 発注者の側の見方がそろっていなければ、聞いた結果は誰の問いにも答えない。

日本の業界規範は、発注者に出す企画書に書くべき項目を定めている。 対象者の抽出方法(リストの出所を含む)、調査手法、実査の設計(人数、対象条件、日時、会場、所要時間)である(JMRA、グループインタビュー調査ガイドライン)。 NN/g は、目的、参加者、方法と手順、同意書やスクリーナーなどの関連文書を一つの調査計画にまとめるよう勧める(Rosala 2024)。 計画の段階で関係者に観察を頼むなら、1 回だけ見て結論を出さないよう、少なくとも 2 回の観察を勧めている(Farrell 2017「How to Collaborate with Stakeholders」)。

  • 調査で決めたい判断と、確かめたい思い込みを書き出し、発注者と合意した(GOV.UK)
  • 発注者の組織の中で、関係者の問題の理解がそろっているかを先に聞いた(This Is Service Design Doing)
  • 調査計画に、目的、参加者の条件、方法、日程、関連文書(同意書、スクリーナー、質問ガイド)をまとめた(NN/g)
  • 企画書に、抽出方法とリストの出所、人数、対象条件、日時、会場、所要時間を書いた(JMRA)
  • 誰が観察するか、観察者は何回見るかを決めた(NN/g)
  • 報告の形(いつ、誰に、どの形式で)を発注者と決めた

来るのは本当に条件に合う人か

スクリーナーは、応募者が参加の条件に合うかを選ぶための短い質問票である。 募集の設計は、Robinson(2014、要旨)が 4 点に分けている。 包含と除外の基準で母集団を定める、人数を決める、抽出の戦略を選ぶ、参加者を調達する(告知、謝礼、偏りの回避、同意)である。 どの戦略でも、情報の豊かな人を意図して選ぶ purposeful sampling が質的調査の基本で、実装研究では基準で選ぶ方法が最も多い(Palinkas ら 2015)。

オンラインで広く募集すると、条件に合うふりをする応募者が入る。 Pozzar ら(2020)は SNS で調査の参加者を募り、7 時間で 271 件の回答を受け取った。 本人確認できる項目の矛盾などで判定すると、94.5%(256 件)が不正、残りの 5.5%(15 件)も疑わしかった。 Jean Louis と Thompson(2025)は、SNS で集めて回答を揃えた 91 人に電話とメールで確かめ、使えるデータを出した人は 8 人(8.8%)だった。 残りは不通の電話番号か、応答しない Google Voice の番号だった。 Sharma ら(2024)は、謝礼 50 豪ドルのオンライン募集に届いた 254 件の関心表明を調べ、応募者の全員が偽の参加者である可能性が高いと判断した。 見分ける手がかりに、短時間に大量に届くメール、ありそうにない時刻(募集国の深夜)の送信、ありそうにない属性を挙げている。 これらは保健の研究の事例で、デザインの調査で同じ率になるとは限らない。 ただし、謝礼を出してオンラインで募る点は同じである。

対策は一つでは足りない。 Jean Louis と Thompson(2025)は、事故防止のスイスチーズモデルにならい、予防と確認の 10 の措置を重ねるよう勧めた。 募集の告知と謝礼の規約を設計し、参加の条件を人が確かめ、データを照合する層である。 二度目の募集では、カメラをつけた Zoom の事前面接で条件を確かめてから参加を案内した。 Mistry ら(2026)の P-FROST の勧告も、研究の設計、謝礼と募集、データ収集(選別と面接)、分析と報告の 4 領域に分けて対策を置いている。

スクリーナーの作り方では、NN/g が具体の手を示す。 職業で除外したいなら、除外する職業の一覧を見せず「ご職業は」と開いた質問で聞く(Whitenton 2019)。 存在しない製品名などの偽の選択肢(foil)を選択肢の中に混ぜると、注意せず答える人や条件を偽る人を見つけやすく、偽の設問を丸ごと置くより効く(Banawa 2025)。 日本の調査会社は、直近 1 年に同じクライアントや同じブランドの調査に参加した人を、回答の偏りを避けるために確かめている(インテージ 2026)。 話してもらえるかも、事前に確かめられる。 Portigal は、募集の段階で簡単な質問に数文で答えてもらう「articulation screen」で、話すのが苦手すぎる人を外すことがあり、面接の前に短い電話で参加者の質問を受けることがラポールにつながると述べている。

来るはずの人が来ないことにも備える。 NN/g は、1 枠に予備の参加者を 1 人つける、2 枠に 1 人つける、枠そのものを多めに組む、の 3 通りを挙げる(Pernice 2020)。 User Interviews 社が自社経由の約 2 万件の調査を集計した報告では、最も多い謝礼額(時給 60 ドル)の非モデレート調査で無断欠席が約 30% あった。 B2B の非モデレート調査で最も低かったのは時給 110 ドルの 2.3% である。 これは同社の顧客の観察値で、謝礼額が欠席を減らすという因果を確かめたものではない。 謝礼を高く勧めることは、同社の売上とも利害が一致する。

GOV.UK は、自分の組織の職員を公開サービスの調査に使わないよう求める。 職員は知識と経験のせいで、一般の利用者と違う使い方をするからである。 障害のある参加者や支援技術の利用者は、見つけるまで最大 1 か月を見込むとしている。

  • 包含と除外の基準、人数、抽出の戦略、調達の経路を書いた(Robinson 2014 要旨)
  • 除外したい職業は、開いた質問で聞くスクリーナーにした(NN/g)
  • スクリーナーの選択肢に、偽の選択肢を混ぜた(NN/g)
  • オンライン募集なら、不正応募の確認手順(連絡先の確認、送信時刻と回答の矛盾の点検、必要ならカメラをつけた事前面接)を決めた(Jean Louis と Thompson 2025、Sharma ら 2024)
  • 謝礼を渡す条件と方法を、募集時の規約に書いた(Jean Louis と Thompson 2025、MRS 規則 26)
  • 同じクライアント、同じブランド、競合の調査への最近の参加歴を確かめた(インテージ)
  • 自分の組織の職員を、一般向けサービスの参加者にしていない(GOV.UK)
  • 予備の参加者か予備の枠を用意し、無断欠席のときの代わりの段取りを決めた(NN/g)
  • 障害のある参加者を含めるなら、募集に最大 1 か月を見込み、付き添いや通訳の費用を予算に入れた(GOV.UK)
  • 外部の募集会社に頼むなら、日時、場所、適格条件、除外条件、割り当て、人数を書面で指示し、権利と責任を書面の契約で定めた(JMRA、MRS の募集会社向け手引き)
  • 必要なら、募集の段階で短い質問に答えてもらい、話してもらえるかを確かめた(Portigal)

同意で何を知らせ、何を残すか

同意の手続きで要るのは、あとで「この人はこれに同意した」と示せる記録である。 GOV.UK は、同意の証拠と、何に同意したかを参加者ごとに残すよう求める。 遠隔なら、同意書をメールか郵送で送って同意の返信を保管するか、同意書を読んでもらったうえで録音の中で口頭の同意を取り、その部分を残せばよい。 同意の記録は、日付やラウンド、参加者の番号で、対応するデータと突き合わせられるようにしておく。

知らせる時期にも規定がある。 英国の業界規範 MRS Code of Conduct は、録音、監視、観察があることを、募集時とデータ収集の開始時の両方で知らせるよう定める(規則 29)。 日本の JMRA の綱領は、調査主体、目的、方法、個人情報の利用目的、提供が任意であることを説明し、参加者がいつでも離脱できることを保証し、離脱した人の求めに応じてデータを削除するよう定める(第 12 条)。 録音や録画の同意は、参加の同意と分けると、参加者が選べる。 NN/g は、一括の「同意します」でなく、参加、音声の録音、映像の録画、データの公表を別々のチェック欄にする形を勧める(Fessenden 2022)。 米国政府の digital.gov の雛形も、録画の承認を別の欄で求め、調査が終われば録画の全体を削除し、共有する引用に顔と名前を含めないと書いている。

同意書が読めるかも確かめる。 米国の医学部 114 校の倫理審査委員会が示す同意書の文面は、平均で 10.6 学年相当の読解力を要し、各委員会が自ら定めた基準を平均 2.8 学年上回っていた(Paasche-Orlow ら 2003、要旨)。 医療の同意書の結果だが、書き手が自分の基準より難しく書いてしまうことは、ヒアリングの説明文でも起こりうる。 Kaiser(2009)は、研究の読み手を考えて同意の取り方を組み直せば、守秘のために詳しいデータの報告を諦めるジレンマを避けられると論じた。

子どもには保護者の同意が要る。 個人情報保護委員会は、法定代理人等の同意が要る子どもの年齢は個別に判断するとしたうえで、一般には 12 歳から 15 歳までの年齢以下の子どもとしている(よくある質問 Q1-62)。 JMRA の綱領も、子どもの場合は事前に親または親権者等の同意を得るよう定める(第 17 条)。

  • 説明文に、実施主体、目的、方法、所要時間、個人情報の利用目的、任意であること、いつでもやめられることを書いた(JMRA 第 12 条、GOV.UK)
  • 録音、録画、観察者の有無を、募集時と開始時の両方で知らせる段取りにした(MRS 規則 29)
  • 参加、録音、録画、引用の公表を別々に選べる同意書にした(NN/g、digital.gov)
  • 観察者に参加者を知る人がいうるなら、開始前にそのことを伝え、断る機会を設けた(MRS 規則 41)
  • データの保存期間(または決め方)と、削除を求める方法を書いた(MRS 規則 47、GOV.UK)
  • 同意の証拠(署名、返信メール、録音の該当部分)を参加者の番号で残す手順を決めた(GOV.UK)
  • 同意書の文面が、対象者に読める難しさかを確かめた(Paasche-Orlow ら 2003 要旨)
  • 報告と公表の読み手を想定し、同意で約束する範囲を決めた(Kaiser 2009)
  • 子どもが対象なら保護者の同意を取る手順を決めた(個人情報保護委員会 Q1-62、JMRA 第 17 条)
  • 文面を、法務かデータ保護の担当に確かめてもらった(GOV.UK、Sansan の実務証言)
  • 録音や撮影をするなら、同意書か秘密保持の取り決めを当日の持ち物に入れた(This Is Service Design Doing「In-Depth Interview」)

謝礼をいつ、何で、いくら渡すか

謝礼をいつ渡すかで、参加者が感じる答え方への圧力が変わる。 GOV.UK は、謝礼をセッションの開始時に渡すよう勧める。 特定の答え方をしないと謝礼をもらえないという含みを避けられ、問題のあるセッションを謝礼の扱いに煩わされずに打ち切れるからである。 NN/g も、謝礼は成果や好意的な感想に左右されないと同意書に書くよう勧める(Fessenden 2022)。

額の公的な基準はない。 英国教育省の手引きは標準の額はないとし、参加を促すのに必要な最小限を目指すよう求める。 GOV.UK も、額は参加者の種類とセッションの長さによるとし、数値は示さない。 日本の調査会社が対象者に示す目安は、1 時間から 2 時間で 8,000 円前後である(インテージの協力者向け案内)。 これは一社の案内で、市場の相場を測ったものではない。 HCI の研究でも、謝礼の決め方と報告の仕方は論文ごとに大きくばらつく(Pater ら 2021、要旨)。

謝礼の品にも決まりがある。 MRS は、研究目的の調査で、クライアントの商品やサービス、それを買うための券を謝礼にしないよう定める(規則 25)。 自社製品を謝礼にすると、調査が販売促進と区別できなくなるからである。 User Interviews 社の 2023 年の調査では、謝礼の種類で最も多いのはギフトカード(66%)だった。 同社の読者から集めた標本で、謝礼の種類は複数回答である。

日本で個人に謝礼を払うときは、税の扱いも確かめる。 国税庁は、謝礼という名目で支払っても、実態が原稿料や講演料などの報酬と同じであれば源泉徴収の対象になるとしている(タックスアンサー No.2792)。 受け取った側の所得区分(一時所得か雑所得か)について、ヒアリングの謝礼を名指しした公式の記述は見つからなかった。 一時所得は労務や役務の対価の性質を持たない一時の所得と定義されている(No.1490)。 ヒアリングで話すことがこれに当たるかは実態で決まるので、継続して支払う場合や額が大きい場合は、税理士か税務署に確かめる。

  • 謝礼の額と、その決め方(時間、負担、対象者の種類)を発注者と合意した(DfE、GOV.UK)
  • 謝礼を渡す時期を開始時にするか、遠隔で後払いにするなら支払いの時期と方法を事前と当日に知らせる段取りにした(GOV.UK、ポップインサイト)
  • 謝礼は答えの内容に左右されないと、説明文か同意書に書いた(NN/g)
  • 発注者の商品や、その購入券を謝礼にしていない(MRS 規則 25)
  • 途中でやめた人への支払いの扱いを決めた(digital.gov の雛形は、途中で終えても謝礼を受け取れると書く)
  • 謝礼の受け渡しの記録(誰に、何を、いつ)を残す手順を決めた
  • 源泉徴収と、受け取る側の所得の扱いを確かめた(国税庁 No.2792、No.1490)

質問ガイドに何を書き、どう試すか

質問ガイド(議論ガイド、インタビューガイド)は、当日の進行と質問を書いた台本である。 GOV.UK は、ガイドに、自己紹介と調査の説明と録音について話す導入の台本、話題ごとの導入の質問と追加の質問、当日の準備の点検表を入れるよう求める。 面接の間は物語と実例に焦点を当て、一般論や「どうあるべきか」の話を避ける。 追加の質問は「さっき〜とおっしゃいましたが、それはいつ、なぜ、誰と」「もう少し詳しく」のような単純な形でよい。 意見や将来の予測でなく過去の具体的な出来事を聞く理由は、ユーザーヒアリングの進め方:学術界と産業界は何を共有し、どこで分かれるか にまとめた(自己報告の限界と、聞き手が答えを動かす大きさ)。

ガイドを作る手順は、学術にも型がある。 Kallio ら(2016、要旨)は、方法論の文献 10 本の系統的レビューから、前提の確認、既存の知識の収集、暫定のガイド、試し聞き、完成版の提示の 5 段階を示した。 Castillo-Montoya(2016、要旨)の枠組みは、質問を調査の問いに合わせる、探究の会話として組む、他人の意見をもらう、試し聞きする、の 4 段階である。 どちらも、試し聞きを手順の中に入れている。

試し聞きは本番の直前に置かない。 NN/g は、条件に合う人で、本番の少なくとも 1 日前に試し、変更が出るものと考えておくよう勧める(Schade 2015)。 資料の印刷、同意書、謝礼、使う画面の準備を通しで確かめ、課題の所要時間を見積もる場でもある。 非モデレートの調査なら、募集の案内から確認のメールまで、すべての連絡を試す。 実務家の Ronsen は、本番の少なくとも 2 日前に置き、条件に合う人が見つからなければ多めに募集して最初の 1〜2 件を試し聞きとみなすとする。 ラクーンホールディングスの実務家は、1 人 1 時間の予定で必ず聞きたい質問に印を付けて優先順位を決め、社内の人で試したところ、意図が一度で伝わらない、後半の質問が時間に収まらないといった問題が想定以上に出たと書いている。 GOV.UK も同僚への試し聞きで、分かりにくい質問を直し、流れの悪い話題の順を入れ替えるよう求める。 試し聞きは学術でもよく行われるが、そこで分かったことを報告した研究は少ない(Malmqvist ら 2019、要旨)。

対面か遠隔かも、ガイドを作る前に決める。 対面と Zoom の面接を比べた研究では、ラポールと共感はどちらも高く評価されたが、一部の参加者では対面の方が有意に高く、会話への没入とデータの質には差がなかった(Anthony ら 2025、要旨)。

  • 導入の台本(自己紹介、調査の目的、録音の説明、やめてよいこと)を一語一句書いた(GOV.UK)
  • 話題ごとに、導入の質問と追加の質問を書き、各話題の時間と優先度を付けた(GOV.UK、ラクーン)
  • 質問は、過去の具体的な出来事を聞く形にした(「普段どうしますか」より「最後に〜したときのことを教えてください」)(GOV.UK、ユーザーヒアリングの進め方:学術界と産業界は何を共有し、どこで分かれるか)
  • 一般論や「どうあるべきか」の話に流れたら、具体の出来事に戻す追加の質問を用意した(GOV.UK)
  • 質問の一つ一つを、調査の問いに対応させた(Castillo-Montoya 2016 要旨)
  • 別の人にガイドを読んでもらい、意見をもらった(Castillo-Montoya 2016 要旨)
  • 本番の 1〜2 日以上前に、条件に合う人か同僚で試し聞きをした(NN/g、Ronsen、GOV.UK)
  • 試し聞きで、資料、同意書、謝礼、画面、時間配分まで通しで確かめた(NN/g)
  • 感情に触れる話題なら、「〜について伺ってもよいですか」と許可を取る言い方と、いつでもやめてよいと繰り返す段取りを入れた(GOV.UK「Researching emotionally sensitive subjects」)
  • 発注者がガイドを確認する機会を設けた(JMRA)

当日、誰が何を記録するか

役割は事前に分ける。 GOV.UK は、聞き手が参加者に集中できるよう、観察者にメモ係を兼ねてもらうよう勧める。 ラクーンの実務家は、聞き手 1 人、速記 2 人、聞く係 1 人に分け、2 人で速記すると書き漏らしが減ると書いている。 Goodpatch は、発言を文字にする係と、分析の手がかりになる気づきをメモする係の二役を置くのが理想とする。 反対の立場もある。 Indi Young は、自身の listening session ではメモを一切取らず、相手に集中し、録音して書き起こしを取るよう求める。 目的が違えば記録の方式も変わる。

録音は既定だが、例外がある。 NN/g は、可能なら録音して書き起こし、誤引用を防ぎ、チームが同じ生のデータに戻れるようにするよう勧める(Fessenden 2021)。 一方で Rutakumwa ら(2020)は、熟練した聞き手が面接の直後に書いた記録と、録音の逐語録を比べ、記録できた詳しさは同程度だったと報告した。 違いは構造で、直後の記録は話題ごとにまとまり、逐語録は会話の順に散らばっていた。 著者らは、録音機が使えない、または使わない方がよい状況から論を始め、場合によっては録音しないことが次善でなく最善の方法だと述べる。

自動の文字起こしは、そのまま根拠にしない。 Koenecke ら(2024)は、OpenAI の Whisper の文字起こしの約 1% に、音声のどこにもない句や文が丸ごと作られていたことを示した。 作られた内容の 38% は、暴力の助長、誤った結びつけ、偽の権威づけなどの明らかな害を含んでいた。 誰も話していない区間で起きやすく、話の中の無音の割合が大きい失語症の話者で多かった。 文字起こしは中立な作業でもない。 言いよどみや方言まで残すか、文法を整えるかで、参加者の受け取られ方が変わる(Oliver ら 2005)。

遠隔では、記録の失敗と映り込みに備える。 ポップインサイトの手引きは、録音や録画を複数の道具で同時に取る「バックアップのバックアップ」を勧め、参加者の画面のブックマークやファイル名に個人情報が映らないか事前に確かめるよう書く。 Ronsen は、ビデオ会議の録画に参加者の名前が残らない設定にしておくと、あとで抜粋動画を作るときに名前を消す手間がなくなるとする。

観察者は、一回の観察からすぐに結論を出しやすい。 NN/g は、関係者を含め 1 回に 4〜10 人のメモ係を置き、各回のあとに短い振り返りで主な気づきを出すやり方を示す(Farrell 2017「Group Notetaking」)。 英国教育省の資金に関するサービスのチームは、仮想の観察室を使った調査で毎日振り返りを開き、そのたびに「観察は一つ一つの証拠で、それだけで提言にはならない」と前置きした。

  • 聞き手、メモ係、観察者の役割と人数を決め、全員に伝えた(GOV.UK、ラクーン)
  • 録音するか、しないならどう記録するかを、話題と参加者に合わせて決めた(NN/g、Rutakumwa ら 2020)
  • 録音しないなら、直後に記録を書く時間を日程に入れた(Rutakumwa ら 2020)
  • 録音と録画を複数の道具で取り、開始前に録画が動いているか確かめる段取りにした(ポップインサイト)
  • 遠隔なら、接続テスト、画面共有の練習、映り込みの確認を前日までに済ませた(ポップインサイト)
  • ファイル名の規則(参加者番号、日時、属性)を決め、録画に実名が残らない設定にした(Ronsen、GOV.UK)
  • 観察者に、口を出さない、メモは見聞きしたことを書く、参加者の個人情報を口外しない、を書面で伝えた(GOV.UK、JMRA)
  • 観察者の中に参加者を知る人がいれば、その人は観察をやめる取り決めにした(JMRA の観察のお願い)
  • セッションの間に休憩と振り返りの時間を取った(NN/g)
  • 自動の文字起こしは、引用に使う箇所を録音と突き合わせる手順にした(Koenecke ら 2024)
  • 文字起こしで言いよどみや方言を残すか整えるかを決めた(Oliver ら 2005)

データをいつまで持ち、どう消すか

保存期間は、始める前に決めて参加者に知らせる。 MRS は、個人データの保存期間かその決め方を、参加者と下請けとクライアントに明確に伝えるよう定める(規則 47)。 GOV.UK は、広い所見は長く役に立つが生のデータはすぐに価値を失うとし、2 年か 3 年を妥当な保存期間の目安とし、それより早く要らなくなれば消すよう勧める。 参加者の連絡先は、参加の管理に要らなくなったらすぐ消す。 英国教育省の手引きは、同意の記録を作成から 2 年以内に消すとし、同意の記録はほかの個人データを持つ根拠なので、消すのは最後にするよう書いている。

日本の法令と業界規範も、目的を終えたデータの消去を求める。 個人情報保護法は、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努めることを定める(個人情報保護委員会、通則編 3-4-1)。 JMRA の綱領も、保有する合理的な理由がなくなった個人情報は、遅滞なく消去か匿名化に努めるとする(第 4 条)。 募集会社、文字起こし、録画の保管に外部のサービスを使えば、個人データの取り扱いの委託にあたりうる。 委託元は委託先を監督する義務を負い、安全管理の水準を確かめて選び、契約に措置を盛り込み、取り扱いの状況を把握する(通則編 3-4-4)。

匿名化は、名前を消すだけでは済まない。 Saunders ら(2015)は、重い脳損傷の家族への面接で、文脈ごとに細かく匿名化の手を変えながら、記述の豊かさをできるだけ保った実際の手順を示した。 保存して再利用するなら、同意書がデータの使い方を決める「契約」になる(Corti ら 2000)。

  • 保存期間と消去の時期を決め、同意書に書いた(MRS 規則 47、GOV.UK)
  • 録音、録画、メモ、同意の記録を、組織が認めた保存先にだけ置き、個人の端末の写しを消した(GOV.UK)
  • ファイル名に日付、ラウンド、参加者番号を入れ、一人分のデータを探して消せるようにした(GOV.UK)
  • 参加者の連絡先を、参加の管理が終わったら消す予定にした(GOV.UK)
  • 外部の募集会社、文字起こし、録画保管のサービスと、取り扱いと消去を書いた契約を結んだ(個人情報保護委員会 通則編 3-4-4、MRS)
  • 参加者からの削除や訂正の求めに応じる窓口を決めた(JMRA 第 12 条、JMRA ガイドライン 2.3)
  • 匿名化の方針(名前、勤務先、地名、珍しい出来事をどう変えるか)を決めた(Saunders ら 2015)
  • 期限が来たら消し、同意の記録を最後に消す段取りにした(DfE)

分析をいつ、誰と行うか

分析は、聞いたあとすぐに始める。 GOV.UK は、観察した人を全員分析の場に招き、記憶が新しいうちに、調査 2 時間あたり 1 時間を分析に充てるよう勧める。 付箋には一つの観察を一枚に、見聞きしたこと(発言のまま、行動のまま)を書き、それが何を意味すると思うかは書かない。 McMahon と Winch(2018)は、データを集めた直後に、目的を持って徹底的に話し合うデブリーフを分析の一段階として定義した。 サービスデザインの実務書も、面接の直後に各自の学びを書き出し、チームで突き合わせるよう勧める(This Is Service Design Doing「In-Depth Interview」)。 メルカリの実務家も、実査の直後に PM とリサーチャーで気づきを共有し、参加できなかった人のために社内のチャットで速報を流している。

速く分析しても、詳しい分析と所見が大きく外れるとは限らない。 退役軍人の医療の評価では、枠組みに沿った迅速な分析と詳しい主題の分析の所見が一致し、迅速な分析の方が資源が少なく済んだ(Gale ら 2019)。 助産の研究の比較では、迅速な分析の所見は主題の分析の所見の 79% と重なった。 データの整理は 43 時間対 116.5 時間と速かったが、解釈と書き上げは 52 時間対 8 時間と長くかかり、全体では 100 時間対 126.5 時間の控えめな短縮だった(Taylor ら 2018)。 迅速な分析で解釈に時間がかかったのは、二つのチームの違いによるのかもしれないと著者らは書いている。

日本の業界規範は、分析が元の記録に戻れることを求める。 JMRA のガイドラインは、録音でも速記でも面接時の原記録を分析に使い、解釈にその記録を使ったことを裏づける資料を整えるよう定める。 AI で分析するなら、その影響と技術の情報を可能な範囲でクライアントに説明する(JMRA 綱領 第 22 条)。

  • 各回の直後に、聞き手と観察者で振り返る時間を取った(McMahon と Winch 2018、NN/g)
  • 調査 2 時間あたり 1 時間を目安に、分析の時間を日程に入れた(GOV.UK)
  • 観察した人を分析に招いた(GOV.UK)
  • 付箋やメモで、見聞きしたことと解釈を分けて書いた(GOV.UK)
  • 所見から元の発言や記録に戻れるように、参加者番号と時刻を付けた(JMRA)
  • 迅速な分析にするか詳しい分析にするかを、判断の締め切りに合わせて決めた(Gale ら 2019、Taylor ら 2018)
  • AI で文字起こしや分析をするなら、そのことと人が確かめた範囲を発注者に説明する準備をした(JMRA 第 22 条)

発注者に何を、どの形で渡すか

報告では、事実と解釈を分ける。 MRS は、成果物と発表で、事実、意見、解釈をはっきり区別するよう定める(規則 60)。 JMRA の綱領は、調査結果とその解釈がデータに裏づけられていることを保証し、インサイトや提言は事実としての調査結果と区別して、導き出した理由を説明するよう定める(第 7 条)。 一人の参加者の強い発言が、発注者の中で全体の傾向として独り歩きするのを防ぐのが、この区別である。

報告に何を入れるかは、実務書がそろって挙げている。 サービスデザインの実務書は、調査の過程とデータの質を保つためにしたこと、主な所見、所見を支える生のデータ(引用など)を入れるとし、生のデータを入れると調査の信頼性が上がると書く(Stickdorn ら、This Is Service Design Doing の方法頁)。 ニュージャージー州の UX チームの手引きは、目的、方法(誰にどう聞いたか)、匿名化した引用で支えたテーマ、提言、限界(人数、範囲、制約)を入れるよう求める。 質的研究の報告基準 COREQ は、面接とフォーカスグループの論文の報告項目を 32 にまとめた(Tong ら 2007、要旨)。 ただし Braun と Clarke(2025、要旨)は、一律の点検表を当てると、方法と合わない基準が持ち込まれると批判している。 発注者への報告に論文の基準をそのまま当てる必要はないが、人数、選び方、記録の方法、限界を書く点は共通している。

読み手は一人ではない。 NN/g は、報告を三層に組むよう勧める(Krause 2022)。 日々の作業に関わらない意思決定者向けの見出し、PM 向けの大きなテーマ、研究者や設計者や開発者向けの詳細である。 GOV.UK は、できるだけ早く共有し、調査の説明 1〜2 枚、所見 5〜10 枚、次の手 1〜2 枚のスライドで定例の場で話す形を挙げる。 報告書を渡すだけでなく、関係者と所見を読み合わせる場も選べる。 NN/g は、所見の理解をそろえる、利用者への共感を育てる、所見を設計案に移す、の 3 種類のワークショップを、受け手の状態に合わせて組み合わせるよう勧める(Kaplan 2025)。

渡してよいデータには限りがある。 ICC/ESOMAR の国際綱領は、参加者が具体的な目的と移転に同意していない限り、個人データをクライアントに渡さないよう定める(第 6 条)。 JMRA の綱領も、第三者(クライアントを含む)への個人情報の開示を、事前に目的を示した本人の同意か法令の根拠がある場合に限る(第 16 条)。 クライアントが結果を公表するなら、形式と内容を事前に相談するよう求める(第 8 条)。

  • 報告に、調査の目的、誰にどう聞いたか(人数、選び方、方法、日時)、所見、根拠の引用、提言、限界を入れた(This Is Service Design Doing、ニュージャージー州 UX チーム)
  • 事実(観察と発言)、意見、解釈、提言を区別して書き、提言には導いた理由を添えた(MRS 規則 60、JMRA 第 7 条)
  • 一人だけの発言と、複数の参加者に共通した所見を書き分けた(MRS 規則 60)
  • 意思決定者向けの見出し、担当者向けのテーマ、実務者向けの詳細の三層にした(NN/g)
  • 最初の速報を、できるだけ早く共有した(GOV.UK、メルカリ)
  • 報告会か読み合わせの場を設け、所見を次の判断に移す時間を取った(NN/g)
  • 引用、写真、録画の抜粋を匿名化し、同意の範囲を超えて渡していない(ICC/ESOMAR 第 6 条、JMRA 第 16 条)
  • 原記録(録画、逐語録)を発注者に渡すか見せるかの扱いを、同意の範囲で決めた(JMRA ガイドライン 2.4)
  • AI を使った工程と、人が確かめた範囲を書いた(JMRA 第 22 条)
  • 発注者が結果を社外に出すなら、事前に相談してもらう約束をした(JMRA 第 8 条)

画面操作の確認を加えるとき、何を足すか

ヒアリングの中で、試作やアプリを参加者に操作してもらい、その様子を確かめる工程を足すことがある。 このとき、話を聞く準備に加えて、操作する物、課題、記録、評価の準備が要る。 グループで操作させる場合の形の選び方は、グループインタビューのチェックリスト:準備するもの、聞くこと、発注者への報告まで に書いた。

操作する物は、壊れても止まらないように用意する。 GDS の実務家たちは、利用者に見せる試作でダミーの文章(Lorem Ipsum)やふざけた名前を使わず、詰めの段階では実際のデータを使い始め、うまくいかない案から戻れるよう別の案を持っておくよう勧める(Lanman ら 2015)。 NN/g は、クリックできる試作では参加者がしうる操作ごとに応答を事前に作る必要があり、静止画の試作では設計を知る人がその場で応答を返す(Wizard of Oz など)と書く(Pernice 2016)。

データとアカウントは、本人の情報を使わない方法を先に決める。 NN/g は、質的な確認なら参加者自身のデータも検討できるとしたうえで、ダミーのデータも現実らしくし、報告の画面では個人情報をぼかすよう書く(Schade 2016)。 MeasuringU は、利用者に自分の情報を使わせるのは難しく、禁じられていることも多いとして、購入ボタンの手前で止める、プリペイドカードを使う、などの代わりの方法を挙げる(Sauro 2014)。 英国の事業会社 dxw は、機微な個人データを扱うサービスで、実データしかないと他人の私的な情報を見せてしまうおそれがあったため、現実らしい架空のデータを作って試した。 GOV.UK は、できるときは参加者自身のデータと書類を使うよう勧め、実データはサービスが扱えて個人データを守れるときに限るとしている。

課題は、答えを教えない形で書く。 NN/g は、課題を現実的な場面に置き、行動を促し、画面の語句や手順を手がかりにしないよう書く(McCloskey 2014)。 商用の 9 チームの結果を分析した研究では、見つかった問題の割合は参加者の数とは関係せず、課題の数と関係した(Lindgaard と Chattratichart 2007、要旨)。 note 株式会社のリサーチャーは、課題を作ったら自分で通しで試すことを欠かさないとしている(仙田 2022)。

思考発話は、説明と練習を用意し、介入の仕方を決める。 NN/g は、多くの参加者には促しが要り、短い見本の動画で期待を伝えられるが、促しや確認の質問は行動を偏らせうるとする(Nielsen 2012)。 Boren と Ramey(2000、要旨)は、実務の思考発話が理論(Ericsson と Simon)どおりに行われていないことを指摘した。 操作中に話してもらうか、終わってから振り返ってもらうかを 29 の研究でメタ分析した Hertzum(2024、要旨)によれば、操作中なら課題の時間は延びるが全体の時間は短く、振り返りなら説明や改善案が多く出る。

画面の記録と個人情報には、話を聞くときより多くの注意が要る。 GOV.UK は、ユーザビリティテストの画面写真を外で使うなら、個人データの映っていないものを選ぶか、映った個人データをぼかすよう書く。 米国 GSA の手引きは、画面共有の前に、録られたくない物を閉じてもらうよう書く。 日本の個人情報保護委員会のガイドラインは、本人が分かる映像と、氏名を含む音声を個人情報の例に挙げている。 発売前の製品なら秘密保持の取り決めも用意する。 米国 NIST の雛形は、秘密保持契約を任意の付録として載せている(NISTIR 7742)。

遠隔で操作してもらうなら、技術の確認を本番から切り離す。 米国国勢調査局の研究者は、ソフトの導入手順をメールで送ったら、複雑すぎるとして参加を断られたので、本番の前に手順を一緒にたどる技術確認の回を設けると案内を変えたと報告している(Olmsted-Hawala と Nichols 2021)。 同じ報告は、録画中に参加者にメールを開かせないよう、同意と事後のアンケートを 1 つの URL にまとめたとしている。 NN/g は、できれば参加者ごとに前日に 15 分のオンラインの練習の回を設けるよう書く(Moran と Pernice 2020)。 ウェールズの社会福祉のチームは、ビデオが技術に不慣れな人の参加の妨げになったので、電話の回に切り替えた。 支援技術を使う人には、本人の機器で参加してもらうのが望ましい(GOV.UK)。

観察者は、操作の確認では特に参加者に影響する。 口をはさまない観察者がいると、生理的なストレス反応が出て、一部の成績が下がった(Sonderegger と Sauer 2009、要旨)。 食べログのチームは、参加者が大勢と向き合わないよう、見学者を別の会議システムへの配信で見せている(日下 2023)。

人数と評価は、目的で決める。 5 人で問題の約 85% が見つかるという目安は、利用者の 31% が出会う問題を前提にした計算で、問題を見つける目的に限られ、製品の比較や完了率の推定には当てはまらない(Sauro 2010、Nielsen 2000)。 問題の重大度は、頻度、影響、持続性から付け、評価者が独立に付けるよう勧められている(Nielsen 1994)。 同じ方法で同じ画面を評価しても、評価者 2 人が見つけた問題の一致は平均で 5〜65% にとどまる(Hertzum と Jacobsen 2001、要旨)。 米国 NIST の雛形は、助けなしで、決めた時間内に終えた課題の数を記録する項目に挙げている(NISTIR 7742)。

  • 試作の文面と名前を現実らしくし、うまくいかない案の代わりの版を用意した(Lanman ら 2015)
  • 試作の応答(クリックできる範囲、人が代わりに返す応答)を決め、通しで試した(Pernice 2016、仙田 2022)
  • テスト用アカウントとダミーデータ(現実らしい名前と値)を用意し、本人の決済情報や個人情報を使わない方法を決めた(Schade 2016、Sauro 2014、dxw)
  • 課題を、現実の場面に置き、答えを教えない形で書き、成功の基準と時間の上限を決めた(McCloskey 2014、NISTIR 7742)
  • 思考発話の説明と練習の時間を台本に入れ、介入の仕方を決めた(Nielsen 2012)
  • 画面録画を同意書の別の欄にし、画面共有の前に通知や個人のファイルを閉じてもらう段取りにした(digital.gov、GOV.UK)
  • 報告と抜粋動画で、画面に映った個人情報をぼかす手順を決めた(GOV.UK、Schade 2016)
  • 発売前の製品なら、秘密保持の取り決めを用意した(NISTIR 7742)
  • 遠隔なら、本番と別に短い技術確認の回を設け、電話への切り替えを用意した(Olmsted-Hawala と Nichols 2021、Moran と Pernice 2020、ウェールズの社会福祉のチーム)
  • 支援技術の利用者には、本人の機器と設定で参加してもらう段取りにした(GOV.UK)
  • 見学者を参加者と同じ画面に入れず、別の経路で見せた(日下 2023)
  • 人数を、問題を見つける目的か、数値を測る目的かで決めた(Sauro 2010)
  • 問題の重大度の付け方を決め、複数の人が独立に付ける段取りにした(Nielsen 1994、Hertzum と Jacobsen 2001 要旨)

このリストの根拠はどこまで強いか

項目の根拠の強さは揃っていない。 数値で確かめられているのは、オンライン募集の不正(Pozzar ら、Jean Louis と Thompson、Sharma ら)、録音と直後の記録の比較(Rutakumwa ら)、自動の文字起こしの誤り(Koenecke ら)、迅速な分析と詳しい分析の比較(Gale ら、Taylor ら)、同意書の読みやすさ(Paasche-Orlow ら)である。 いずれも保健や社会科学の調査で、デザインのヒアリングで同じ大きさになるかは確かめられていない。 謝礼の時期、観察者の扱い、報告の形の多くは、手引きと業界規範と実務家の経験にもとづく規範で、効果を測ったものではない。 謝礼の額と無断欠席の数値は、自社の顧客を集計した調査会社の観察値で、高い謝礼を勧めることは同社の売上とも利害が一致する。 画面操作の確認の項目のうち、思考発話、評価者のばらつき、課題の数、観察者の影響は実証の結果に基づくが、試作とデータの準備、遠隔の段取り、映り込みの扱いは、手引きと実務家の経験に基づく。

このノートの収集で見つからなかったものもある。 デザインのヒアリングで、スクリーナーの設問の作り方や無断欠席への対処を確かめた研究は見つからなかった。 日本のヒアリングの謝礼について、標本と期間を示した相場の調査も見つからなかった。 発注者への報告の形(長さ、層、場)が、所見の使われ方を変えるかを測った研究も見つからなかった。

関連ノート

未検証事項

主要主張に未検証の記述は残していない。 次の学術の文献は本文が 3 経路以上で取れず(出版社が機械の取得を断った)、要旨の範囲で書いた。 Anthony ら(2025)、Boren と Ramey(2000)、Braun と Clarke(2025)、Castillo-Montoya(2016)、Hertzum(2024)、Hertzum と Jacobsen(2001)、Kallio ら(2016)、Lindgaard と Chattratichart(2007)、Malmqvist ら(2019)、Paasche-Orlow ら(2003)、Pater ら(2021)、Robinson(2014)、Sonderegger と Sauer(2009)、Tong ら(2007)。 Mistry ら(2026)は、本文は取れたが、勧告の 4 領域の区分だけを使った。

参照文献

アクセスはすべて 2026-11-03。台帳と検証の記録は source/review/user-interview-checklist/ の papers.md と industry.md。

学術

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  • Sonderegger, Andreas, and Juergen Sauer. 2009. “The Influence of Laboratory Set-up in Usability Tests: Effects on User Performance, Subjective Ratings and Physiological Measures.” Ergonomics 52 (11): 1350–1361. https://doi.org/10.1080/00140130903067797

公的機関、法令の手引き、調査倫理の規範

調査会社、コンサル

実務家の一次証言


書いた人:小川 修一郎(デザイン研究者/デザインコンサルタント) 経歴を見る →