Shuichiro Ogawa
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ノート · updated 2026-09-26

新規性の芽はどこで見つかるのか:驚き、読み直し、見かけだけの新規性

新規性がないように見える題材でも見方を変えれば新規性が出る、という見込みがどの条件で成り立ち、どの条件で見かけだけの新しさに終わるのかを、研究者が新規性の芽をどこでどう見つけるかの実証研究と、題材を読み直す方法論の文献から検討した文献ノート。学術文献81件を集め、本文では64件を使う。

目次(12)
  1. 見方を変えれば新しくなるのか
  2. 研究者は芽をどこで拾っているか
  3. 境界にいる人は芽を多く見つけるのか
  4. 偶然はどんな形で芽になるか
  5. 気づきはどの瞬間に起きるか
  6. デザイン研究は見慣れたものをどう異化してきたか
  7. 既出に見える題材をどう読み直すか
  8. 見かけの新規性と、見落とされる新規性
  9. 芽を問いに育てるには
  10. 新規性の芽を見つける手順
  11. 収集の空白
  12. Footnotes

見方を変えれば新しくなるのか

題材を前にして「もうやり尽くされている」と感じたとき、研究者はよく、見方を変えれば新規性は出るはずだと考える。 この見込みを裏づける記録は、科学社会学の古典にある。

Barber と Fox が1958年に報告した事例では、二人の医学者が、それぞれの研究の途中で同じ現象に出会った。 酵素のパパインを注射したウサギの耳が垂れ、やがて元に戻る。 一人はこの観察から発見に至り、もう一人は至らなかった。 Barber と Fox は二人に面接を重ね、同じ偶然が一方でだけ発見に変わった経緯を比べた。 対象は同じで、違っていたのは見る側である。

逆向きの記録もある。 grit(努力の粘り強さと興味の一貫性からなるとされる特性)は、誠実性(conscientiousness)とは別の、成功をよく予測する高次の特性として提示されてきた。 Credé、Tynan、Harms は88の独立標本(66,807人)を統合したメタ分析で、grit の高次の構造が確認されないこと、grit が誠実性と非常に強く相関することを示した。 名前は新しかったが、測っていたものの多くは既知の特性と重なっていた。

同じ「見方を変える」操作が、一方では発見になり、他方では見かけだけの新しさに終わる。 道が分かれるのはどこなのか。

姉妹ノートは、この前後を扱ってきた。 新規性のある問いはどこから来るのか:四つの座とその組合せの学術的検討 は新規性が論文のどこに宿るかを、新規性はどう作られ、どう名乗られるか:確立戦略の類型 は新規性をどう作り、どう名乗るかを、問題を立て直す手法の学術地図:アブダクション2から問題構造化まで は問題そのものを立て直す手法を整理した。 新規性の主張はどう確かめ、どう守り、どう書くか:投稿前の確認から論文の束まで は、名乗った新規性を投稿の前後でどう確かめて守るかを扱った。 残っているのは、そのどれよりも手前の段階である。 研究者はどこで芽に気づき、既出に見える題材をどう読み直しているのか。 そして、その読み直しが見かけに終わるのはどんな条件のときか。

研究者は芽をどこで拾っているか

着想の出どころを、研究者本人の記録から長く追った研究は多くない。 その一つが Root-Bernstein、Bernstein、Garnier の研究である。 彼らは男性の科学者40名(うち4名は後にノーベル賞を受けた)に1958年から1978年まで4回面接し、1988年に存命だった38名に質問紙を送った。 質問には、重要な洞察がいつ訪れやすいか(その問題に直接取り組んでいるとき、別の問題に取り組んでいるとき、くつろいでいるとき、歩いているとき)が含まれていた。 研究上の成功は、視覚的な思考、芸術や音楽の趣味、幅広い余暇活動と相関していた。 彼らは、成功した科学者は研究と研究外の活動を互いに支え合う形で統合していて、そうでない科学者の研究外の活動は研究と時間を奪い合っている、と結論した。 芽は机の上だけで拾われているわけではなく、研究の外の活動が研究とつながっているかどうかで、拾える量が変わる。

実験ノートを資料にした研究は、芽が進行中の研究の内側で現れることを示してきた。 Kulkarni と Simon は、Hans Krebs が1932年に尿素回路を発見した過程を、実験ノートと面接の記録に沿って KEKADA というプログラムで再現した。 KEKADA は驚きに反応し、それを説明する仮説を立て、確かめる実験を組む。 その振る舞いは、ノートと面接が示す Krebs の進め方と一致するように作られている。 Holmes は、Lavoisier から Krebs、Meselson と Stahl、Benzer まで、3世紀にわたる6人の実験科学者の研究の経路を、広い、中くらい、細かい三つの縮尺で追い、長期の実験研究に共通する特徴を探った。

誰が新しいアイデアを試すのかについては、計量の記録がある。 Packalen と Bhattacharya は、1946年以降に出版されたほぼすべての生物医学論文のテキストから新しいアイデアを特定し、若い研究者の論文ほど新しいアイデアの上に築かれていることを示した。 若い筆頭著者と経験のある最終著者の組合せが、他のどの組合せよりも新しいアイデアを試していた。

組織の条件を調べた研究もある。 Heinze、Shapira、Rogers、Senker は、ナノテクノロジーとヒト遺伝学で欧米の非常に創造的な研究成果20件の事例を調べた。 創造的な成果は、小さな集団、補完的で多様な技能を十分に利用できる組織、安定した研究資金、外部の技能と資源への時宜を得たアクセス、それを支える指導者と結びついていた。 彼らは、柔軟な機関内の資金を削って競争的な研究費を増やすことが、創造的な科学への脅威になりうると指摘している。

境界にいる人は芽を多く見つけるのか

新しい芽は集団の境界で見つかりやすい、という見方には機構の説明が付いている。 Burt によれば、意見と行動は集団の内側では似通い、集団のあいだでは違う。 集団をまたいでつながる人は、別の考え方とやり方に通じているので、他の人には見えない選択肢が見える。 彼は米国の大手電機メーカーでサプライチェーンに関わる管理職673名のネットワークを調べ、各人が書き出した最良のアイデアの質を同社の役員2名に評価させた。 集団のあいだを仲介する位置にいる人ほど、アイデアを口にし、アイデアを退けられにくく、価値があると評価されやすかった。

境界の外から来た人が問題を解く場面も記録されている。 Jeppesen と Lakhani は、研究開発型の大企業の研究室が外部に公開した科学の課題166件と、12,000人を超える解決者のデータを分析した。 解決者の専門分野が課題の分野から遠いほど、勝つ解決策を出していた。 科学の中心から外れた位置にいるとされてきた女性の解決者は、男性より有意に好成績だった。

ただし、「周縁にいる人ほど革新する」という命題は一般には成り立たない。 Gieryn と Hirsh は、形成期(1960年から1975年)の X線天文学を調べ、周縁的な科学者が他の科学者より革新に貢献しやすいとはいえないことを示した。 そのうえで、周縁性という概念は曖昧すぎて、革新の源を調べる道具としてほとんど役に立たないと論じた。 一人で外にいることも、境界をまたぐことと同じではない。 Singh と Fleming は50万件を超える特許を分析し、単独の発明者、特に組織に属さない発明者は、ブレイクスルーを出しにくく、極端に劣る発明を出しやすいことを示した。 共同は、選別を通じて劣る結果を減らし、組合せの機会を通じてブレイクスルーを増やす。 広い知識が効くかどうかも領域による。 Teodoridis、Bikard、Vakili はソ連崩壊が理論数学者に与えた影響を自然実験として使い、変化の遅い領域ではジェネラリストが、変化が速くなった領域では専門家が優位になることを示した。

境界で見つかった芽は、受け手に割り引かれることもある。 Hofstra らは、1977年から2015年に米国で博士号を得た約120万人の学位論文と、その後の経歴を追った。 新規性は、学位論文の中で初めて結びつけられた概念の組の数で測られ、新しい結びつきの約半分はその後一度も使われなかった。 性別と人種で過少代表の集団ほど、新規性を高い率で生み出していた。 しかし、その新規な貢献は他の研究者に取り上げられる率が低く、同じ影響力の貢献でも研究職の成功に結びつきにくかった。 意味の上で遠い概念どうしの結びつきほど後続の研究に取り上げられず、過少代表の性別の学生は遠い結びつきをやや多く導入していた。 境界は芽を見つけやすい場所であると同時に、見つけた芽が認められにくい場所でもある。

偶然はどんな形で芽になるか

偶然の発見は、一つの型にまとめられがちである。 Yaqub は Merton の文書館(513箱)を手がかりに118の事例を集め、セレンディピティを4つの類型に分けた。

  • Walpolian:探していなかったものの発見。Walpole の本来の用法に近い。
  • Mertonian:探していた問題の解決に、予期しない経路でたどり着く発見。
  • Bushian:目標を定めない研究(あるいは研究でない活動)から、求めていなかった解決が得られる発見。
  • Stephanian:目標を定めない研究が、まだ誰も立てていなかった問題と、その解決を同時に見つける発見。すぐには役立たず、後の問題を解く。

彼は同時に、セレンディピティが起きる機構を4つ挙げた。 理論が育つことで観察が目立つようになる theory-led、特定の道具や技法や資質を持つ観察者にだけ見える observer-led、手順の逸脱や誤りから生じる error-borne、複数の行為者のつながりから生じる network-emergent である。 誤りについては、Delbrück が「限られただらしなさ」(limited sloppiness)と呼んだ原則が紹介されている。 Luria の言葉では、どこが雑かを自覚しているかぎり、多少雑な実験がかえって得になることがある。 ネットワークは発見を知らせ、活かすための技能を集める一方で、集団思考によって偶然を見えにくくもする。

偶然の発見は、論文になると見えなくなる。 Yaqub は、論文が研究の行き止まりを省くか整った物語に仕立てることを、偶然の発見が記録に残りにくい理由に挙げ、Barber と Fox が「遡及的な改竄」(retrospective falsification)と呼んだ慣行として紹介している。 Copeland は、セレンディピティを、発見の過程を動かした意図と、得られた結果とのあいだの斜めの関係として捉え、発見に創発する性質だと論じた。 価値のある結果が得られてはじめて、予期しない観察の意味を振り返れるので、セレンディピティは後から分類される。 彼女はまた、セレンディピティを認めることは、知識がどこから来るかについての予想に限界があると認めることと結びついていると述べている。

偶然の出会いは、設計して増やせるのか。 Lane らは医学研究のシンポジウムで、科学者15,817組の対面の機会を外生的に変える現場実験を行い、その後6年の出版を追った。 関心の一部が重なる組は、会って知識を得やすく、共著論文が1.2本多かった。 同じ分野の組は、互いの論文を3倍から7倍少なくしか引用しなかった。 偶然の出会いが芽になるには共有する知識が少しは要り、分野が同じだと競争の効果も現れる。

気づきはどの瞬間に起きるか

では、芽に気づく瞬間には何が起きているのか。 Krebs を再現した KEKADA が反応したのは、驚きだった。 驚きは、予想があるところにしか生じない。 Klahr と Simon は、科学史の記述、非科学者を使った心理実験、実験室の観察、計算モデルという4つの接近法を人間の問題解決の理論から比べ、発見の過程の要所で知見が収束していると論じた。 KEKADA は、そのうち計算モデルの側の例である。

質的研究の方法論は、驚きを理論構築の原理にしている。 Timmermans と Tavory は、グラウンデッド・セオリーから理論上の革新が乏しかった理由の一部を、理論を帰納的に立ち上がらせることへのこだわりに求めた。 帰納は、論理的には新しい理論的洞察を導かない。 彼らは代わりに、驚きのある証拠から新しい仮説を立てるアブダクションを指導原理に置いた。 アブダクションは研究者の社会的、知的な位置から生じるが、データへの立ち返り(revisiting)、見慣れたものの異化(defamiliarization)、事例の別の切り取り方(alternative casing)という手続きで支えられる。 驚けるかどうかは、研究者が何を知っているかに左右される。 Glaser も、グラウンデッド・セオリーで理論を生むには theoretical sensitivity(理論的感受性)という技能を育てることが要ると論じ、同じ本で理論的メモ(theoretical memos)と、その並べ替え(theoretical sorting)に章を割いた。

予想が強すぎると、驚きは割り引かれる。 Chinn と Brewer は、科学者と科学を学ぶ生徒が異常なデータにどう反応するかを分析し、7つの反応の形を区別した。 データを無視する、拒否する、現在の理論の範囲外として除外する、保留する、再解釈する、理論の周辺を変える、理論を変える、である。 データを受け入れて理論を変えるのは最後の一つだけで、残る6つは、既存の理論を守るために何らかの形でデータを割り引く。 Fugelsang、Stein、Green、Dunbar は、研究室の会議で科学者がその場で推論する様子を観察した。 科学者は予想と合わないデータを、最初は「本物」と見なしたがらなかった。 しかし合わないデータが繰り返し観察されると、理論のほうを修正した。 統制した模擬課題でも、学生は同じ推移をたどった。 芽は、最初は誤差として扱われやすい。

Locke、Golden-Biddle、Feldman は、この割り引きを越える手がかりを、Peirce のアブダクションを動かす疑いの側から整理した。 知らないことに向き合う(turn toward not knowing)、言葉になる前の予感を育てる(nurture hunches)、既存の秩序を崩す(disrupt the order)の3原則である。 三つ目の原則の説明で、彼らは Abbott の一節を引いている。 珍しい事実に出会ったときの最初の反応が、それを既存のカテゴリーに押し込むことや、お気に入りの考えで合理化することであるなら、謎を見るのに苦労する。

デザイン研究は見慣れたものをどう異化してきたか

見慣れすぎた対象では、驚きそのものが起きにくい。 デザイン研究と HCI は、この問題に異化の手続きで応えてきた。

Bell、Blythe、Sengers は、家庭はあまりに見慣れているので、デザインの空間を開くには家庭を異化しなければならないと論じた。 家電には、家事の性別分業のように見落とされやすい文化的な意味が詰まっている。 彼らは異化の語りを三つ示した。 米国の台所の歴史を読んで新しい家庭の技術を見直すこと、英国の拡大家族の民族誌で当たり前の家庭の技術を問題にすること、都市に住むアジアの中間層の比較民族誌で新しい技術が思いがけない形で取り込まれる様子を見ることである。 同じ家庭という題材が、歴史、別の家族形態、別の文化に置き直されて、新しい設計課題に変わっている。

Sengers、Boehner、David、Kaye は、技術に埋め込まれた無自覚の価値と前提を分析し、別の可能性を映す機器を設計、製作、評価する reflective design を提案した。 Loke と Robertson は、運動にもとづくインタラクションのデザインで、観察者と機械の視点に加えて動く本人の視点を入れる方法論を作り、「見慣れないものにする」(making strange)を中心の戦術に置いた。 Wilde、Vallgårda、Tomico は、身体を使うデザインの発想の手法を、異化(estrangement)の力を理解して活かすための枠組みで分析した。 Clancey の書評によれば、Winograd と Flores は、知識は脳の中の表象ではなく明文化されていない共有の背景にあり、人は新しい状況に対処するためにそこから表象を取り出すと論じた。 これに対して計算機のプログラムは最初に選ばれた対象と性質しか持たないので、breakdown(途切れ)が起きたときに最初の形式化を越える足場がない。

データの側から異化する手続きもある。 川喜田二郎の KJ 法は、ネパールでの民族誌のデータの解釈に行き詰まったことから作られた。 Scupin は、KJ 法が Peirce のアブダクションの考えに立ち、直観的で非論理的な思考の過程に頼る手続きであると紹介している。 データを既存の分類に入れる前に、断片を並べ直して関係を見つけるという点で、Timmermans と Tavory の立ち返りと別の切り取り方に近い。

既出に見える題材をどう読み直すか

見方を変える操作を集めた文献は、心理学と社会学にまとまってある。 McGuire は、方法論の授業が仮説の検定に偏り、仮説の生成を教えていないことを正すために、仮説を生む49のヒューリスティクスを5つのカテゴリーと14の下位区分に整理した。 自然な出来事の奇妙さに気づく常識的な感受性から、洞察を促すための高度な量的分析の使い方までが含まれる。 Wicker は、同じ考えが繰り返し浮かぶという Galton の観察を手がかりに、見慣れた研究問題に新しい視点を得るための戦略を4群にまとめた。 考えと遊ぶ、文脈を考える、前提を探ってひねる、概念の枠組みを明確にして体系化する、である。 Becker は、研究しながら考えるための「トリック」を、イメージ、標本抽出、概念、論理の4章に分けて示した。 Mills は、社会学的想像力の大部分はある視点から別の視点へ移る能力にあると書き、想像力を刺激する方法として、ファイルの中身を混ぜて並べ直すこと、問題を定義する言葉と遊ぶこと(同義語を調べる)、類型を作ること、極端と反対を考えること、比べられる事例を探すことを挙げた。

Fiedler は、これらの操作に位置を与えた。 理論の形成は、変異を生む「ゆるめる」段階(loosening)と、選び抜く「締める」段階(tightening)の循環である。 心理学は締める段階の方法論を洗練させてきたが、ゆるめる段階を理解する試みは目立って欠けている。 見方を変える操作はゆるめる側にあり、それが新規性になるかどうかは締める側で決まる。

構成概念を分ける、名づけ直す

Fisher と Aguinis は、既存の概念や予備的なモデルを土台に新しい理論的洞察を得る理論の精緻化(theory elaboration)の戦術を7つ挙げた。 水平の対比、垂直の対比、新しい構成概念の特定、構成概念の分割、特定の関係の構造化、順序関係の構造化、再帰関係の構造化である。 このうち分割と新しい構成概念の特定は、既知の現象に新しい名前と境界を与える操作にあたる。

grit のメタ分析は、この操作の成否が同じ研究の中で分かれた例でもある。 Credé らの分析では、grit を一つの高次の特性とする見方は支持されなかった。 一方で、下位側面の「努力の粘り強さ」(perseverance of effort)は、もう一つの側面の「興味の一貫性」より基準との関連が有意に強く、誠実性を統制した後でも学業成績を説明した。 全体として新しい特性だという主張は見かけに近く、分けた側面の一つに、既知の特性では説明できない部分が残った。

見かけに終わる条件は、心理測定の古い警告にある。 Kelley は1927年に、学力(achievement)の検査と知能(intelligence)の検査が測るものは少なくとも9割が同じなのに、名前が違うために別物として扱われていると論じた。 実際には同じ状況を指しているのに、響きの違う二つの言葉を、本当に違うものであるかのように使うことを、彼は jangle fallacy と名づけた。 逆に、同じ言葉で呼ばれるというだけで違うものを一つの概念として扱う誤りは、Thorndike が紹介した Aikins の呼び名で jingle fallacy と呼ばれている。 Le、Schmidt、Harter、Lauver は、従業員292名に2時点で回答を求め、測定誤差を補正すると職務満足と組織コミットメントの構成概念の相関が .91 に達し、両者が正と負の感情性と似た関係を持つことを示した。 概念上は確立した区別が、経験的には見分けられなかった。 Hodson は、指標の内部の相関と指標のあいだの相関が同程度なら、潜在因子どうしはほぼ完全に相関して冗長になるという数学上の事実が心理学で軽視されてきたと指摘し、jingle-jangle という軽い呼び名ではなく「構成概念の冗長の誤謬」と呼ぶよう提案した。 Shaffer、DeGeest、Li は、別物に見えて実は同一かもしれない構成概念が積み重なる構成概念の増殖(construct proliferation)に対し、3種の測定誤差を考慮して弁別妥当性を確かめる手順を示した。 Elson、Hussey、Alsalti、Arslan は、心理学の尺度の多くが1回か2回しか使われないことを、研究の信頼性への脅威として問題にした。 名づけ直しが新規性になるのは、測定誤差を補正したうえで既存の構成概念と区別でき、既存の構成概念では説明できない分を説明するときに限られる。

文脈を替える

Johns は、文脈を、組織行動の生起と意味、そして変数間の関係に影響する状況上の機会と制約と定義し、研究者が文脈の影響を十分に評価していないと論じた。 Whetten は、文脈を越えて理論を借りる研究を、文脈の中に理論を置く theories in context と、文脈そのものを理論化する theories of context に分けた。 彼の検討は、中国の組織研究が西洋の理論に頼りすぎているという批判に応えるもので、理論の借用をやめるのではなく、借用を文脈に敏感にする方法を探っている。 文脈の効果で組織の現象を説明することが、文脈を越える研究すべてに欠かせないと彼は位置づけた。 Tsui は、世界の経営知識の多くが北米と西欧の研究から来ていることを指摘し、新興経済という新しい文脈での質の高い土着研究(indigenous research)が、文脈化された知識と世界の知識の両方に貢献しうると論じた。

Bell らの比較民族誌は、文脈を替えることが新しい設計課題を生んだ例として読める。 西洋の家庭用技術のデザインが描く「未来のデジタルな家」に対して、都市アジアの中間層の日常では、新しい技術が思いがけない形で取り込まれていた。

見かけに終わるのは、既存の理論を新しい場所で当てはめて確かめただけで、なぜその場所で違いが出るのか(あるいは出ないのか)を説明しないときである。 Sandberg と Alvesson が application spotting と呼んだ問いの立て方(新規性はどう作られ、どう名乗られるか:確立戦略の類型)は、この形になりやすい。 Whetten の区別に当てはめれば、文脈を替えた研究が新規性を持つのは、文脈の効果を理論の中に取り込んだときである。

分析の水準を替える

個人の現象を集団や組織の現象として読み直す操作は、組織研究で多水準の理論として整えられてきた。 Klein、Dansereau、Hall は、理論の水準を定めるときの前提を、上位の単位の中で等質である、上位の単位から独立している、上位の単位の中で異質である、の三つに分け、この前提が構成概念と命題、そしてデータの収集と分析と解釈に影響すると論じた。 Chan は、同じ内容を指しながら水準(個人、チーム、組織)によって質的に違う構成概念の関係を、5つの基本形の合成モデル(composition models)に整理し、合成モデルを特定することが多水準研究の要件だとした。

見かけに終わる条件の古典が Robinson である。 Robinson は1930年の米国の国勢調査(10歳以上の人口)を使い、個人を単位にした相関と、地域を単位にした生態学的相関を比べた。 黒人であることと非識字の個人相関は .203 だったが、州を単位にすると .773、地域区分(division)を単位にすると .946 になった。 外国生まれであることと非識字の個人相関は .118 と正だったが、州を単位にした相関は −.526、地域区分では −.619 と符号が逆になった。 集団の水準で見つけた関係を個人の関係として読むと、新しい知見に見えて誤りになる。 水準を替えた読み直しが新規性になるのは、ある水準の関係が別の水準の関係とどうつながるか(合成モデル)を示したときである。

同じデータを別の手続きで読み直す

既存のデータを別の手続きで読み直すと、結論が変わることがある。 Ebrahim らは、公表済みのランダム化比較試験の個票データを同じ仮説で再分析した研究を探し、37件を見つけた。 再分析の違いは、統計手法(18件)とアウトカムの定義や測り方(12件)に多かった。 13件(35%)が原論文と違う解釈に至り、3件は別の患者を、1件はより少ない患者を、9件はより多い患者を治療すべきだという結論になった。 ただし、原著者と完全に独立した著者による再分析は5件だけだった。

結論が変わったことは、それだけでは新しい知見を意味しない。 Silberzahn らは、29チーム61人の分析者に、同じデータで同じ問い(サッカーの審判は肌の色の濃い選手に退場処分を出しやすいか)を分析させた。 推定されたオッズ比は0.89から2.93(中央値1.31)に散らばり、20チーム(69%)が有意な正の効果を、9チーム(31%)が有意でない結果を報告した。 29の分析は、21通りの共変量の組合せを使っていた。 この散らばりは、分析者の事前の信念でも専門性でも、分析の質の相互評価でも説明できなかった。 別の手続きで得た違う結果は、まず手続きの選択に由来する可能性を疑われる。 再分析が新規性を持つのは、手続きの違いがなぜ結論を変えるのかを説明できるときである。 結果を見てから手続きを選んだ場合は、新規性はどう作られ、どう名乗られるか:確立戦略の類型 で見た HARKing と同じ形になる。

操作化を替えて理論を確かめる

同じ理論を、別の操作化で確かめ直す読み直しもある。 Crandall と Sherman は、元の研究にできるだけ近い形で行う直接の追試と、同じ理論的過程を別の方法で検証する概念的追試を対比した。 直接の追試は操作化への確信を高め、概念的追試は理論への確信を高める。 彼らが挙げる例では、木星の衛星イオの食の時刻のずれから Rømer が見積もった光速は、同じ観測を何年も繰り返しても当時の有力な科学者を説得できなかった。 Bradley が恒星の見かけの位置のずれを使う別の方法で近い値を得たことで、光速が有限だという結論は受け入れられた。 同じ結論に別の道具で到達したことが、決め手になっている。

見かけに終わる条件も、彼ら自身が検討している。 概念的追試が失敗すると、理論が誤っていたのではなく操作化がまずかったと片づけられやすい。 批判者は、概念的追試を確証の偏りを生むだけの仕組みだと呼んできた。 Crandall と Sherman は、同じ問題は直接の追試の失敗にもあると応じたうえで、失敗した概念的追試を公開し、活かす方向を提案している。 操作化を替えた読み直しは、何が失敗にあたるかを事前に決めておかないかぎり、確証の繰り返しになる。

理論より先に現象に戻る

Hambrick は、経営学の主要誌が理論への貢献を掲載の条件にしているために、まだ知られていない事実を観察して報告する研究が締め出されていると論じた。 事実の収集そのものが、やがて理論の発展に寄与するという立場である。 von Krogh、Rossi-Lamastra、Haefliger は、新しい現象や最近の現象を特定して報告する研究を、以後の研究が進むための経験的事実と構成概念を確立する研究と位置づけた。 オープンソースソフトウェア開発の研究を例に、特定、探索、設計、理論化、統合という研究活動の流れを示している。 彼らによれば、厳密な現象起点の研究は、経営の実務に関わり、しかも既存の理論の範囲に収まらない問題を扱う。 現象から出発する理論化は、新規性のある問いはどこから来るのか:四つの座とその組合せの学術的検討 でも Fisher、Mayer、Morris の整理として扱った。

見かけに終わるのは、既存の理論で説明のつく現象を、新しい現象として報告するときである。 現象に戻る読み直しが新規性になる条件は、その現象が既存の理論の範囲の外にあることである。

見慣れたものを異化する

デザイン研究の異化と、Timmermans と Tavory の defamiliarization は、どちらも見慣れたものを見慣れないものとして扱い直す操作である。 研究者が当たり前と見なしているものを、歴史、別の文化、別の身体、別の事例の切り取り方に置き直して、驚きが起きる条件を作る。

この操作が見かけに終わりやすいのは、驚きが研究者にとってだけ新しいときである。 驚けるかどうかは研究者の知的な位置に左右されるので、ある研究者にとっての驚きが、別の分野ではすでに知られていることは起こりうる。 異化で得た芽は、分野の文献の側で確かめてはじめて新規性の候補になる(確かめ方は 新規性の主張はどう確かめ、どう守り、どう書くか:投稿前の確認から論文の束まで に整理した)。

操作と条件の対応

操作新しさが出た例見かけに終わる条件確かめ方
構成概念を分ける、名づけ直すgrit の「努力の粘り強さ」が誠実性の統制後も成績を説明(Credé ら)既存の構成概念と経験的に区別できない(Kelley、Le ら、Hodson)測定誤差を補正した弁別妥当性と、増分の説明力(Shaffer ら)
文脈を替える家庭の技術を別の文化の日常に置き、思いがけない取り込み方が見えた(Bell ら)既存理論を新しい場所で当てはめただけ(Whetten)文脈の効果を理論に取り込んだか
分析の水準を替える同じ内容の構成概念を水準ごとに合成モデルで結ぶ(Chan)集団の関係を個人の関係として読む(Robinson)合成モデルを特定したか
同じデータを別の手続きで読む再分析の35%が治療の解釈を変えた(Ebrahim ら)違いが分析の選択に由来する(Silberzahn ら)手続きの違いが結論を変える理由を説明できるか
操作化を替えて理論を確かめる別の方法で光速を測り直して受け入れられた(Crandall と Sherman)失敗を操作化のせいにする何が失敗にあたるかを事前に決めたか
理論より先に現象に戻るオープンソースソフトウェアの開発を現象として特定し、理論化へ進めた(von Krogh ら)既存理論で説明のつく現象を新しいと呼ぶ既存理論の範囲の外にあるか
見慣れたものを異化する米国の台所の歴史から家庭の技術を見直す(Bell ら)驚きが研究者にとってだけ新しい分野の文献で確かめたか

見かけの新規性と、見落とされる新規性

構成概念の冗長、生態学的相関の読み違い、分析の選択による違いは、どれも見方を変えて得た新しさが、実は既知か誤りだったという失敗である。 文献には、逆向きの失敗も同じくらい記録されている。 本物の芽が、見つけた本人と周囲に割り引かれることである。

研究者自身は、予想と合わないデータを最初は本物と見なしたがらない(Fugelsang ら)。 異常なデータへの7つの反応のうち、6つは既存の理論を守る(Chinn と Brewer)。 受け手の側でも、過少代表の集団が出した新規な貢献は取り上げられにくい(Hofstra ら)。

アイデアを選ぶ場面の実験も、同じ方向を示す。 Rietzschel、Nijstad、Stroebe は、人がアイデアを選ぶとき、独創性を犠牲にして実行可能で望ましいアイデアを選ぶ強い傾向を見出した。 独創的なアイデアを選ぶよう明示的に指示すると、選ばれたアイデアの独創性は上がったが、選んだ人の満足と、選ばれたアイデアの効果の評価は下がった。 Mueller、Melwani、Goncalo は、不確実性を減らしたい動機が働くと、創造的なアイデアに対する負の偏りが生じ、創造的なアイデアを見分ける力そのものが損なわれることを2つの実験で示した。 Licuanan、Dailey、Mumford は、大学生181名にチームのマーケティング案を評価させ、本当に新しいアイデアの独創性が過小評価されること、案の独創性とチームの相互作用の過程を能動的に分析させるとこの誤りが減ることを示した。

「見方を変えれば新規性は出る」という見込みは、二つの失敗のあいだにある。 見方を変えずに芽を割り引けば、本物の新しさを見落とす。 見方を変えただけで締めなければ、見かけの新しさを名乗る。 Leavitt、Mitchell、Peterson は、組織科学が確証的な検定に偏り、理論を境界づけて減らす研究(theory pruning)が乏しいと論じた。 理論と構成概念が過密な分野では、新しい見方を足すことより、既存の見方どうしを比べて減らすことのほうが新規性になる場合もある。

芽を問いに育てるには

見つけた芽は、そのままでは問いにならない。 残し、寝かせ、人に話し、選ぶという段階が要る。

残すことについては、科学者のノートの研究がある。 Tweney は、Faraday のノートが主要な科学者の残した最大級の記録であり、記録の技法そのものを体系的に発明し探究した跡を含むことを示した。 ノートは、科学的思考における記憶の役割を明らかにする資料でもある。 Gruber はダーウィンのノートを資料に、創造的な仕事を並行して進む複数の営みの網(network of enterprise)として描き、Root-Bernstein らもこの語で成功した科学者の特徴を説明した。 Mills は『社会学的想像力』の付録で、研究者はファイルを作るべきだ、つまり日誌をつけるべきだと書いた。 そこには個人の経験と職業上の活動、進行中の研究と計画中の研究が一緒に綴じられる。 彼は、漠然としたイメージや着想でも自分のものなら手放さずに練り上げるべきだと書き、独創的なアイデアはほとんどいつもそうした形で最初に現れるとした。

寝かせることについては、心理学の実験の蓄積がある。 Sio と Ormerod は、問題をいったん脇に置く incubation(孵化)の効果を調べた研究をメタ分析し、正の効果を確認した。 効果は、言語や視覚の洞察問題より、多くの答えを出す発散的な課題で大きかった。 準備の期間が長いほど効果は大きく、脇に置いているあいだを負荷の高い課題で埋めると効果は小さかった。 Baird らは、以前に取り組んだ創造性の課題について、休憩中に負荷の低い課題をした群が、負荷の高い課題、休息、休憩なしの群より大きく成績を伸ばし、その向上が課題について意識して考えた量ではなく、心がさまよう程度と結びついていたことを示した。 芽は、十分に取り組んだ後で手を離した時間の中で育つことがある。

話すことの効果は、条件つきである。 Hasan と Koning はスタートアップの研修で現場実験を行い、開放性の高い参加者は外向的な相手と話すと良いアイデアを出したが、内向的な相手と話すとかえって悪いアイデアを出したことを示した。 開放性の低い参加者は、誰と話しても平凡なアイデアにとどまった。 Boudreau らはハーバード大学医学部で、90分の構造化された情報共有の場に研究者を無作為に割り付け、同じ場に割り付けられた組の共同の助成申請が75%増えたことを示した。 Catalini は、パリの Jussieu キャンパスでアスベスト除去のために研究室の配置が制約されたことを利用し、研究室が近くに置かれると共同研究の確率が3.5倍になることを示した。 近くに置かれた研究室は題材と引用する文献が似ていき、離された研究室は相関の低い研究の軌道に進んだ。 近さは共同を生むが、見方を揃えもする。

選ぶ段階では、作り手の目が役に立つ。 Berg はサーカス芸術の専門家339名と観客13,248名のデータで、新しい演目の成否の予測を比べた。 作り手は、他者の新しいアイデアについては管理者より正確に予測したが、自分のアイデアについては優位がなかった。 実験室の研究では、作り手の優位は、アイデアを生む発散的な思考と評価する収束的な思考の両方を役割として担うことに結びついていた。 良い問題の選び方の経験則(Alon)と「面白さ」の条件(Davis)は、新規性のある問いはどこから来るのか:四つの座とその組合せの学術的検討 と 新規性はどう作られ、どう名乗られるか:確立戦略の類型 に整理した。

新規性の芽を見つける手順

冒頭の二つの記録に戻ると、耳の垂れたウサギを追った医学者も、grit を提唱した研究者も、見方を変えている。 違いは、見方を変えた後に何をしたかにある。

  1. 予想を先に書く:何が起きると思っているかを書き出してから観察する。驚きは予想との食い違いとしてしか現れない。12
  2. 合わないデータを捨てる前に記録する:予想と合わない結果は、誤差として片づける前に残し、繰り返し現れるかを確かめる。既存の理論を守る反応のほうが起きやすい。345
  3. 研究の外の活動と別の題材を研究につなげる:余暇の活動や並行する別の研究を、研究と時間を奪い合うものではなく、互いに支える形で組む。偶然の発見には、目標を定めない探索や誤りから来る型がある。67
  4. 集団をまたぐ接触を作る:別の集団の考え方に通じる位置を取る。出会う相手は、関心が一部重なる人のほうが知識生産につながる。891011
  5. 見慣れた対象を異化する:歴史、別の文化、別の身体、極端と反対、比べられる事例に置き直し、当たり前を問題に変える。ヒューリスティクスの一覧は、手を動かす出発点になる。122131415
  6. 読み替えの操作を一つ選び、何を何に読み替えたかを一文で書く:分ける、文脈を替える、水準を替える、手続きを替える、操作化を替える、現象に戻る、のどれをしたのかを明示する。1617181920
  7. 見かけの新規性の検査を通す:名づけ直しなら弁別妥当性と増分の説明力を、水準を替えたなら合成モデルを、文脈を替えたなら文脈の効果の説明を、手続きを替えたなら結論が変わる理由を確かめる。212223242526
  8. 残し、寝かせ、話す:漠然とした着想もファイルに残す。十分に取り組んでから、負荷の低い時間に手を離す。開放的な作り手にとっては、情報を開いて話す相手が助けになる。13272829
  9. 選ぶときに独創性を捨てない:実行しやすさだけで芽を選ばない。他人の芽を評価するときは、作り手の目を借りる。303132
  10. 分野の文献で確かめる:研究者にとっての驚きが分野にとっても新しいかを、新規性の主張はどう確かめ、どう守り、どう書くか:投稿前の確認から論文の束まで の手順で確かめる。

見慣れたものを、どこまで遠くへ置き直せば芽になるのかは、まだ決まっていない。 Hofstra らは、意味の上で遠い概念どうしの結びつきほど後続の研究に取り上げられないことを示した。 取り上げられなかった遠い結びつきのうち、どれが見かけの新しさで、どれが見落とされた新しさなのかを分ける手段は、今回の収集では見つからなかった。

収集の空白

  • 研究者への大規模な調査:着想の出どころを多くの分野の研究者に尋ねた大規模な調査。今回集めたのは、40名を長く追った研究(Root-Bernstein ら)と、科学史の事例研究にとどまる。
  • 異化の手続きの評価:デザイン研究の異化や reflective design が、どの条件で受け入れられる研究貢献につながったかを比べた研究。
  • 概念的な貢献の冗長の検査:構成概念の冗長には測定上の検査があるが、質的研究や概念研究で「新しい概念」が既存の概念の言い換えかどうかを確かめる手続きは乏しい。
  • 芽の追跡:現代の研究室で、ノートに現れた芽が論文の問いになるまでを追跡した研究。科学史の事例(Krebs、Faraday、ダーウィン)が中心である。
  • 遠い結びつきの見分け方:意味の上で遠い新しい結びつきのうち、見かけの新しさと見落とされた新しさを分ける研究。
  • 日本語圏の発想法の実証:KJ 法の効果を統制した比較で確かめた研究は収集していない。
  • LLM による読み替えの支援:LLM に題材の読み替えを提案させる研究は、新規性はどう作られ、どう名乗られるか:確立戦略の類型 の LLM の節に譲り、本ノートでは集めていない。

関連ノート

未検証事項

本文の主要主張は、要旨か本文の該当箇所で確かめた範囲で書いた。 次の項目は確認が届かなかったため、本文では使わないか、範囲を狭めて書いた。

  • Barber と Fox (1958) は要旨の範囲でだけ使った。二人の医学者の名前と、一方が観察を追わなかった理由は、原論文の本文に到達できず(出版社ページは有料、公開 PDF は取得できず)、二次の記述しか確かめられなかったため書いていない。
  • Zuckerman (1977) は、面接した受賞者の人数(56名中41名)を出版社の紹介文で確かめたが、受賞者が年長の受賞者のもとで研究の基準を身につけたという記述は二次の記述にしか到達できず、本文では使っていない。
  • Zuckerman (1978) と Gieryn (1978) の問題選択と問題の乗り換えの議論、Ben-David と Collins (1966) の役割の混成(role hybridization)、Rousseau (1985) の多水準の議論は、要旨に到達できず(OpenAlex、Semantic Scholar、Crossref、PubMed に要旨なし)、本文では使っていない。
  • Holmes (2004) は出版社の紹介文の範囲でだけ使った。
  • Klein、Dansereau、Hall (1994) の三つの前提は、出版社ページ(Cloudflare で到達できず)の要旨を検索エンジン経由で確かめた。
  • Winograd と Flores (1986) は、Clancey の書評(テクニカルレポート版の ERIC 要旨)の範囲でだけ使った。
  • Schön (1983) の驚きと reflection-in-action、Polanyi (1966) の問題を見ることについての記述は、二次の引用でしか確かめられず、本文では使っていない。
  • Crandall と Sherman (2016) の光速の例は論文の記述に従ったが、論文は Rømer の観測を1671年とし、Bradley の方法を parallax motion と呼んでいて、科学史の通説と食い違う可能性がある。本文では年を書かず、方法を「恒星の見かけの位置のずれ」とした。
  • Credé ら (2017) の grit と誠実性の相関の値は、本文を照合していないため書いていない。
  • Elson ら (2023) の尺度の再利用の割合は取得できず、要旨の定性的な記述の範囲で書いた。
  • Wilde ら (2017) が分析した手法の数は確かめられず、要旨の範囲で書いた。
  • Gruber (1981) の network of enterprise は、書誌と二次の記述で確かめた範囲で使った(初版は1974年)。
  • コーパスにだけ記録し本文で使っていない文献(Root-Bernstein ら 2008、Csikszentmihalyi 1996、Hackett 2005、Van Maanen ら 2007、Tavory と Timmermans 2014、Becker の本文、Jaccard と Jacoby 2010、Bamberger 2008、Zahra 2007、Block 1995、Gooding 1990 など)の未確認事項は、コーパスの ## 未検証事項 に一覧がある。

参照文献

芽の出どころと研究の経路

境界と周縁

セレンディピティ

  • Barber, B. & Fox, R. C. (1958). The case of the floppy-eared rabbits: an instance of serendipity gained and serendipity lost. American Journal of Sociology 64(2):128–136. https://doi.org/10.1086/222420
  • Copeland, S. (2019). On serendipity in science: discovery at the intersection of chance and wisdom. Synthese 196(6):2385–2406. https://doi.org/10.1007/s11229-017-1544-3
  • Lane, J. N., Ganguli, I., Gaulé, P., Guinan, E. C., Lakhani, K. R. (2021). Engineering serendipity: when does knowledge sharing lead to knowledge production? Strategic Management Journal 42(6):1215–1244. https://doi.org/10.1002/smj.3256
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驚き、疑い、異常なデータ

デザイン研究の異化と KJ 法

読み直しのヒューリスティクス

理論の精緻化、文脈、水準

追試、再分析、現象起点

  • Crandall, C. S. & Sherman, J. W. (2016). On the scientific superiority of conceptual replications for scientific progress. Journal of Experimental Social Psychology 66:93–99. https://doi.org/10.1016/j.jesp.2015.10.002
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構成概念の冗長と理論の剪定

芽の保持、孵化、会話、選別

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Footnotes

  1. Kulkarni, D. & Simon, H. A. (1988). The processes of scientific discovery: the strategy of experimentation. Cognitive Science 12(2):139–175. https://doi.org/10.1207/s15516709cog1202_1 ↩

  2. Timmermans, S. & Tavory, I. (2012). Theory construction in qualitative research: from grounded theory to abductive analysis. Sociological Theory 30(3):167–186. https://doi.org/10.1177/0735275112457914 ↩ ↩2

  3. Chinn, C. A. & Brewer, W. F. (1993). The role of anomalous data in knowledge acquisition: a theoretical framework and implications for science instruction. Review of Educational Research 63(1):1–49. https://doi.org/10.3102/00346543063001001 ↩

  4. Fugelsang, J. A., Stein, C. B., Green, A. E., Dunbar, K. N. (2004). Theory and data interactions of the scientific mind: evidence from the molecular and the cognitive laboratory. Canadian Journal of Experimental Psychology 58(2):86–95. https://doi.org/10.1037/h0085799 ↩

  5. Locke, K., Golden-Biddle, K., Feldman, M. S. (2008). Perspective: making doubt generative: rethinking the role of doubt in the research process. Organization Science 19(6):907–918. https://doi.org/10.1287/orsc.1080.0398 ↩

  6. Root-Bernstein, R. S., Bernstein, M., Garnier, H. (1995). Correlations between avocations, scientific style, work habits, and professional impact of scientists. Creativity Research Journal 8(2):115–137. https://doi.org/10.1207/s15326934crj0802_2 ↩

  7. Yaqub, O. (2018). Serendipity: towards a taxonomy and a theory. Research Policy 47(1):169–179. https://doi.org/10.1016/j.respol.2017.10.007 ↩

  8. Burt, R. S. (2004). Structural holes and good ideas. American Journal of Sociology 110(2):349–399. https://doi.org/10.1086/421787 ↩

  9. Jeppesen, L. B. & Lakhani, K. R. (2010). Marginality and problem-solving effectiveness in broadcast search. Organization Science 21(5):1016–1033. https://doi.org/10.1287/orsc.1090.0491 ↩

  10. Lane, J. N., Ganguli, I., Gaulé, P., Guinan, E. C., Lakhani, K. R. (2021). Engineering serendipity: when does knowledge sharing lead to knowledge production? Strategic Management Journal 42(6):1215–1244. https://doi.org/10.1002/smj.3256 ↩

  11. Boudreau, K. J., Brady, T., Ganguli, I., Gaulé, P., Guinan, E., Hollenberg, A., Lakhani, K. R. (2017). A field experiment on search costs and the formation of scientific collaborations. Review of Economics and Statistics 99(4):565–576. https://doi.org/10.1162/REST_a_00676 ↩

  12. Bell, G., Blythe, M., Sengers, P. (2005). Making by making strange: defamiliarization and the design of domestic technologies. ACM Transactions on Computer-Human Interaction 12(2):149–173. https://doi.org/10.1145/1067860.1067862 ↩

  13. Mills, C. W. (1959). The Sociological Imagination, Appendix “On Intellectual Craftsmanship”. Oxford University Press. 付録の公開版: https://webdelprofesor.ula.ve/humanidades/contrera/cwmills-intel_craft.pdf ↩ ↩2

  14. Wicker, A. W. (1985). Getting out of our conceptual ruts: strategies for expanding conceptual frameworks. American Psychologist 40(10):1094–1103. https://doi.org/10.1037/0003-066X.40.10.1094 ↩

  15. McGuire, W. J. (1997). Creative hypothesis generating in psychology: some useful heuristics. Annual Review of Psychology 48:1–30. https://doi.org/10.1146/annurev.psych.48.1.1 ↩

  16. Fisher, G. & Aguinis, H. (2017). Using theory elaboration to make theoretical advancements. Organizational Research Methods 20(3):438–464. https://doi.org/10.1177/1094428116689707 ↩

  17. Whetten, D. A. (2009). An examination of the interface between context and theory applied to the study of Chinese organizations. Management and Organization Review 5(1):29–55. https://doi.org/10.1111/j.1740-8784.2008.00132.x ↩

  18. Chan, D. (1998). Functional relations among constructs in the same content domain at different levels of analysis: a typology of composition models. Journal of Applied Psychology 83(2):234–246. https://doi.org/10.1037/0021-9010.83.2.234 ↩

  19. Crandall, C. S. & Sherman, J. W. (2016). On the scientific superiority of conceptual replications for scientific progress. Journal of Experimental Social Psychology 66:93–99. https://doi.org/10.1016/j.jesp.2015.10.002 ↩

  20. von Krogh, G., Rossi-Lamastra, C., Haefliger, S. (2012). Phenomenon-based research in management and organisation science: when is it rigorous and does it matter? Long Range Planning 45(4):277–298. https://doi.org/10.1016/j.lrp.2012.05.001 ↩

  21. Kelley, T. L. (1927). Interpretation of Educational Measurements. World Book Company, pp. 62–65. 公開版: https://gwern.net/doc/iq/1927-kelley-interpretationofeducationalmeasurements.pdf ↩

  22. Le, H., Schmidt, F. L., Harter, J. K., Lauver, K. J. (2010). The problem of empirical redundancy of constructs in organizational research: an empirical investigation. Organizational Behavior and Human Decision Processes 112(2):112–125. https://doi.org/10.1016/j.obhdp.2010.02.003 ↩

  23. Shaffer, J. A., DeGeest, D., Li, A. (2016). Tackling the problem of construct proliferation: a guide to assessing the discriminant validity of conceptually related constructs. Organizational Research Methods 19(1):80–110. https://doi.org/10.1177/1094428115598239 ↩

  24. Credé, M., Tynan, M. C., Harms, P. D. (2017). Much ado about grit: a meta-analytic synthesis of the grit literature. Journal of Personality and Social Psychology 113(3):492–511. https://doi.org/10.1037/pspp0000102 ↩

  25. Robinson, W. S. (1950). Ecological correlations and the behavior of individuals. American Sociological Review 15(3):351–357. https://doi.org/10.2307/2087176 ↩

  26. Silberzahn, R. et al. (2018). Many analysts, one data set: making transparent how variations in analytic choices affect results. Advances in Methods and Practices in Psychological Science 1(3):337–356. https://doi.org/10.1177/2515245917747646 ↩

  27. Sio, U. N. & Ormerod, T. C. (2009). Does incubation enhance problem solving? A meta-analytic review. Psychological Bulletin 135(1):94–120. https://doi.org/10.1037/a0014212 ↩

  28. Baird, B., Smallwood, J., Mrazek, M. D., Kam, J. W. Y., Franklin, M. S., Schooler, J. W. (2012). Inspired by distraction: mind wandering facilitates creative incubation. Psychological Science 23(10):1117–1122. https://doi.org/10.1177/0956797612446024 ↩

  29. Hasan, S. & Koning, R. (2019). Conversations and idea generation: evidence from a field experiment. Research Policy 48(9):103811. https://doi.org/10.1016/j.respol.2019.103811 ↩

  30. Rietzschel, E. F., Nijstad, B. A., Stroebe, W. (2010). The selection of creative ideas after individual idea generation: choosing between creativity and impact. British Journal of Psychology 101(1):47–68. https://doi.org/10.1348/000712609X414204 ↩

  31. Mueller, J. S., Melwani, S., Goncalo, J. A. (2012). The bias against creativity: why people desire but reject creative ideas. Psychological Science 23(1):13–17. https://doi.org/10.1177/0956797611421018 ↩

  32. Berg, J. M. (2016). Balancing on the creative highwire: forecasting the success of novel ideas in organizations. Administrative Science Quarterly 61(3):433–468. https://doi.org/10.1177/0001839216642211 ↩


書いた人:小川 修一郎(Design Researcher / Consultant) 経歴を見る →